絶望の先で見えた、しあわせ

もしも今、誰かに「あなたは今、しあわせですか？」と聞かれたら、少しだけ悩んで「しあわせです」と答えると思います。

それはまだ、しあわせというものを一つひとつ確かめながら歩いている途中だからです。

目には見えているしあわせではなく、もっと奥深くにあるものを見ようとしている途中だから。

そしてきっとこれから先、その答えを探しながら人生を歩き続けていくんだと思っているからでもありました。

けれども少し前のワタシなら、きっとこう答えるでしょう。

「ワタシは今、不幸のどん底にいて、何もかもが信じられないし、暗いトンネルの中を出口も見えないまま歩き続けているんです」と。

失恋の数だけ人を嫌いになってゆく

まだ結婚する数年前、ワタシは心がエグられるような失恋を何度も体験しました。

エッセイを書き始めたきっかけだって、「いつかアイツらを見返したい！復讐してやるんだ」という気持ちで書き始めたくらい。

それくらい根に持っていたし、心の底から「しあわせになるなんて許せない！」とも思っていました。

きっとそう思うくらい、付き合っていた時は真剣に恋をしていたし、相手を大切に思い、互いのために、彼のために、尽くし過ぎてしまったんだと思います。

よくフラれる前には「君は素敵だから、もっと良い人がいるよ」なんて言葉を言われることもありましたが、「どうしてあなたじゃないの？それって、ただ面倒になって誰かに押し付けたいだけじゃん」と、言葉自体に深く傷ついたこともありました。

対等であるはずの関係が、少しずつワタシが下手に出るようになり、本心を隠しても好かれようとすることもありました。

いつしか、別れの決定権は彼が持っていたし、都合の悪いことがあれば決まって「別れよう」と簡単に口に出されるようになりました。

気を遣ってしまう性格のせいで、その辺りも自分自身を蔑ろにし過ぎていたのかもしれません。

裏切りの数だけ傷ついて

色々な人と交際をしてきましたが、あらゆる角度で裏切られることがありました。

都合よく使われていた上に、別の女性と同時進行され簡単にワタシを捨てた人。

尽くしていたことに甘えられ、挙句浮気をされて別れを切り出してきた人。

言葉の暴力でねじ伏せて、全てを都合よく使おうとしていた人。

その他にも、多くの裏切りがありました。

その度に学習していくんです。

「もう人を信じることも、心の底から愛して傷つくこともやめて、期間限定の関係を楽しんでいこう」と。

そしていつしか、ワタシは人自体を信じることもやめました。

人はいずれいなくなるもの

恋愛以外でも人間関係のもつれは、常にどこかで起きていました。

仕事も友人関係も同じです。

あれだけ親しかった人が、突然他人のようになったこともありました。

結局は、自分の都合のいいことを言ってくれる人がみんな好きで、別の意見を持っている人や、真剣に話をしようとしてくる人は、煙たがれることに改めて気付かされました。

いつしか、心の中で線引きをするようになっていったんです。

「正しいとか間違ってるとかのことではなく、その人自身が心地のいい言葉をかけてくれることが、一番大切なことなんだ」って。

そして意見を持ち、真剣に向き合ったとしても、それは捉え方次第では負の感情に傾いてしまうことも。

どれだけ信頼関係を築き上げてきたとしても、ドミノのように手が触れてしまった瞬間に、全てが崩れてしまうことを身をもって痛感したのです。

しあわせと思える今

冒頭でもお話ししたように、少し考えて「しあわせです」と答えられるようになるまでに、多くのものを失いました。

仕事も友人も、そして恋人も。

本当に沢山泣いて、あらゆる角度からの絶望を味わいました。

ただその中でも、ハリボテのワタシではなく、本当の姿を見ようとしてくれる人もごくわずかですがいることに気づいたんです。

もしかしたら、側から見たら結婚もして、夢も追いかけてという状況自体が、しあわせだと言う人もいるかも知れない。

けれども結婚は、あくまでカタチに過ぎません。

ワタシにとって、夫は対等に話ができる人であり、友人であり、尊敬できる夫でもある。ただそれだけです。

そして数少ない友人たちも同じように、人として、友として、そして尊敬できる相手であること、それだけなんです。

そのことに気がつくまでに、多くの時間と心を削ってきました。

ようやく、生きていく中で何が大切なのか、何を信じるべきなのかを知り始めたのかもしれません。

等身大で生きることが、幸せの一歩

今のワタシは、媚びを売る相手もいなければ、忖度して言葉を選ばなければいけない相手もいません。

今までできなかった等身大の姿で生きることが、出来るようになった一人の人間です。

だからきっと、迷いながらも「しあわせです」と答えられるような気がするんです。

だって人生は、自分のためのものであって、他人の物語に出演しているエキストラではないから。

ワタシの人生はあくまでワタシが主人公なら、自分の気持ちに嘘をついてまで一緒にいなければいけない人たちと、関わることをやめたんです。

すると少しずつ霧が晴れて、あたりの景色がぼんやりだけど見えてくるようになりました。

今まで見えてこなかったものを、ようやく時間をかけて見ようとしている段階なんだと思います。

そしてその旅は、これから先の一生かけて見ていくのだと思うから。

もう、誰かのために時間を犠牲にして生きることはやめます。

そしてこれからは、本当に心の中を見ようとしてくれる人たちと共に、「幸せが何か」を探してみようと思います。

心に嘘をつかず、ワタシはワタシの人生を歩いていけるように。