リクエスト企画「タバコについて」

コラボ企画

今回いただいたリクエストは「タバコについて」です。

いつも投稿を見てくださっている皆さんだったら、「納言にピッタリなお題だなぁ」と思ってくださるかもしれません。

ということで今回は、タバコとの関係を余すところなく書いていこうと思います。笑

それでは、スタートです。

香りの先に

幼い頃、ワタシはある特定の香りがすごく好きでした。

それは他の人からしたら、嫌な気分になる人もいるかもしれないけれど、ワタシにとってはお香やキャンドルみたいな癒しの香りと同じ成分が入っているようなものでした。

誰かが生み出した白い煙に、焦げたような香り、そして独特の匂いを放つもの、それがタバコだったんです。

まだ幼少期の頃は、タバコを吸っている人が当たり前にいたし、電車やバスの中で吸えるほどではなくても、喫煙者の方が多く存在する時代だったと思います。

カフェに入ると、タバコの香りが染み付いたソファーの匂いにうっとりして、その空間自体に安心感を抱いていました。

いつしか「大人になったら、ワタシもタバコを吸おう」そう思うようになったんです。

未経験から経験へ

20歳になったら吸う」そう心に決めてから、ずっと大人の仲間入りをする日を心待ちにしていました。

ワタシにとっては、タバコは大人になった証であり、そして勲章のようなものに思えていたのかもしれません。

そしてとうとう20歳の誕生日を迎えてから数ヶ月後の仕事帰りに、初めて同期たちと一緒にコンビニでタバコを買って、吸うことができました。

あの日の景色は今でも忘れられません。

どんよりとした黒い雲が空を覆い、ポツポツと雨が降っていました。

濡れないようにコンビニの灰皿を屋根の下ギリギリに寄せて、ゆっくり吸ったんです。

どうやってやったらいいかが分からずに、最初はただ口の中に含ませるだけでした。

しかし、一度吸い始めたことで、今まで我慢していたものが一気に溢れて、なくてはならないアイテムの一つとなりました。

煙に感情を乗せて

それからというもの、仕事で疲れた時や、1人になりたい時にはタバコを吸うようになりました。

ベランダに出て、大好きな音楽をイヤホンから垂れ流し、空を見上げながら煙の行方を見つめる時間が大好きだったんです。

そうすると自然と感情が溢れて、時には煙と共に涙を流すこともありました。

口の中に広がる苦い味と、煙の香りがワタシを包み込むような気がして。

祖父とワタシは愛煙家

まだ祖父が生きていた頃、私たちだけの秘密の時間がありました。

それが漁師だった祖父の船が止まっている海で、2人でタバコを吸う時間だったんです。

「じいちゃん。吸いにいこうか」そう言うと「おいね」とだけ言って、軽トラを走らせてくれました。

何かを話すわけでもなく、ただ一緒にタバコを吸うだけの時間が好きでした。

トンビが鳴いていたり、船の音が遠くの方から聞こえてきたり。潮風の香りとタバコの煙が妙に私たち2人の絆を深めてくれたような気がしていたから。

そんな姿を見た祖母は、「タバコばっかり吸って」と怒っていましたが、普段無口な祖父との時間は、ワタシにとってかけがえのない瞬間だったのです。

しかし、祖父は83歳で私たちに別れを告げることなく、亡くなってしまいました。

葬式が終わった後、思い出の海に1人で向かい、たった1人で吸ったタバコの味は今でも忘れることができないんです。

潮風のせいでしょっぱいのか、それとも涙で塩気を感じていたのかがわかりませんでした。

「一緒に吸おうって言ったくせに。じいちゃんの嘘つき・・・」そう言って、何本もタバコを吸い続けたことだけは、今でも鮮明に覚えているんです。

過去と思い出とタバコの煙

今の世の中は、喫煙者にとっては肩身の狭い時代となってしまいました。

けれどもワタシにとってタバコは、幼い頃の憧れを思い出させてくれて、祖父との秘密の時間を蘇らせてくれる大切なものです。

そして未だにタバコがやめられないのも、どこかで祖父との思い出が消えないように、存在していることを煙で伝えるようにしているのかもしれません。

海を見つめてタバコを吸う時には、こう語りかけているんです。

「じんちゃん、今日も一緒にタバコ吸おうよ」って。

線香をあげる代わりに、タバコの煙を空へと届けるようにして・・・。

コメント ナイーブな私に勇気をください

  1. TK1979 より:

    タバコについて···を読んで

    じいちゃん、吸いにいこうか

    私は現在タバコは吸いませんが、以前は納言さん同様の愛煙家でした。
     タバコをやめるに至った経緯などは、幾度かコメントしたと思いますので省略いたします。
     納言さんのじいちゃんとの思い出ですね。そんな話を読んで私のタバコの思い出をひとつ。
     家族と別れて二年の月日がたった時、娘と二人で旅行をする機会にめぐり逢いました。小学生低学年だった娘は高学年となり、驚くほど身長が伸びていました。
     つき並みな観光をしてホテルでの出来事です。私がソファーでくつろいでいると、娘はテーブルの上に置いてあるタバコに手を伸ばしました。
     一本のタバコを手に取ると鼻先まで持っていき、大きく深呼吸をするように匂いを嗅いでいました。
     私は思わず
    『おい、おい、小学生が吸うもんじゃあないで!』
    と注意をしました。
     そうすると娘は閉じていた目を開き

    『おとうさんの匂い···』

    と一言いいました。
     一緒に暮らしていた時は、衣服にこびりついたタバコの匂いを嫌っていたのに···。
     こんな素敵な宝物を捨てたのかと、がく然としました。もう娘とは逢うことはありません。
     そんな私のタバコの思い出を思い出させてくれたエッセイでした。
     ありがとうございます。

    • いつも読んでくださり、ありがとうございます。吸わない人からしたら害があると考えられるタバコにも、人それぞれ思い出があったり、過去を思い出させてくれる大切なものだったりすることもあります。
      子どもの頃に嗅いだ匂いは、まさしく祖父の香りでした。
      その匂いが好きで、ずっと憧れも抱いていたんだと思います。
      今でこそ喫煙者の肩身は狭くなってしまいましたが、ふわりと香る匂いの先に、亡くなった祖父との思い出が蘇ってくるんですよね。それが私にとってタバコが嫌いになれない一番の理由なのかもしれません。
      TK1979さんと娘さんとのやりとりも、とても温かく、どこか切ない感情がタバコに映し出されているのかなと思いながら、コメントを読ませていただきました。

  2. わい より:

    二十歳まで吸わなかったの偉いね!
    素晴らしかったよ
    タバコに素敵な思い出があったんだね

    • 読んでくださり、ありがとうございます。
      二十歳までは、「吸わない」そう決めていた自分を褒めたいです。笑
      ただ吸うだけではなく、心のスキマだったり、思い出を埋めてくれる大切なアイテムでした。
      こうして読んでいただいて、とても嬉しかったです。
      ありがとうございました。

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