ゴリラになった日

保育士時代の体験談・過去のトラウマ

ワタシには忘れられない、いや、きっと生きている限り絶対に忘れることができない「面接」を受けたことがあります。

「面接」と聞けば、思い浮かべるのは短所と長所を聞かれたり、学生時代に取り組んできたことや、これからの目標などを聞かれたこともありました。

それならば、普通の「面接」なのですが・・・。

たった一度だけ、とても不思議で人生の中で一番恥をかいた「面接」の話を、今回は書いていこうと思います。

もしも、ワタシ以外に不思議な「面接」をしたことがある人は、ぜひエピソードを聞いてみたいです。笑

就職先は鬼ヶ島

社会人1年目に就職した場所は、幼稚園でした。

働いている頃は、あまりの過酷さに「鬼ヶ島」と呼び、そして毎日あらゆる鬼たちの攻撃に耐える日々でした。

保育士とは名ばかりで、そこで巻き起こるあらゆるハラスメントにどんどん心が壊れていくような気がしました。

保育士になることを夢に見て、保育士になれたことを誇りに思っていた時期はたった数ヶ月で終わり、そこからは「いつ、誰が、心を病んで去っていくのか」を数える日々になっていたと思います。

2年目になった頃には、ターゲットは完全にワタシになり、あらゆるハラスメントが襲いかかってきました。

「ここは、何地獄にあたるんだろうか・・・」そう思うほど、鬼たちの所業は語り尽くせないほど酷いものばかりだったのです。

とうとう限界を超えたワタシは仕事を辞めて、少しの間は仕事もせずに家に籠るようになりました。

幼稚園を辞めて

しかし、毎日家にいることにも飽きてきた頃、ふと「もう一度働いてみようかな」という気持ちが芽生え始めていたんです。

まだ若かったこともあり、このまま独りぼっちで家に籠るだけの生活をしていたら、それだけで人生が終わってしまうという焦りもあったのかもしれません。

だから無理矢理にでも前を向く必要がありました。

そこで、ワタシは「もう一度、保育士をしたい」そう思い、求人募集を片っ端から探しました。

正規職員ではなく、契約社員かパートのどちらかで働ける場所を見つけるために。

しかし、そう簡単にいい場所なんて見つかるわけもなく、どれだけ求人を見ても「ここで働きたい」と思える場所はありませんでした。

そうこうしている間に、月日はどんどん経っていくし、働いていた頃の貯金は減っていくから不安だけが募っていく状態でした。

認定こども園に面接を

鬼ヶ島で地獄の経験したら、「幼稚園だけは、辞めておこう」そんな気持ちになっていたから、認定こども園か、保育園で新たに働ける場所を探していました。

すると、家からもさほど遠くない場所に認定こども園の求人募集を見つけたのです。

「認定こども園なら、幼稚園と違ってもう少しゆったり働けるかもしれない」とかすかな希望を持ち、早速電話をして面接の日取りが決まったのです。

電話口から聞こえてくる声は、穏やかで優しい雰囲気だったのを今でも覚えています。

鬼ヶ島にいた鬼たちなんかよりも、ずっとずっと人間味を感じるような声に心底安心をしたんです。

「ようやく、前を向けるようになるかもしれない」そんな淡い期待を抱いて・・・。

面接当日

さて、面接当日は学生時代に買ってもらったリクルートスーツに身を包み、慣れないヒールを履いて、緊張しながら園へと向かいました。

指定された持ち物の中には、筆記用具と楽譜があり、この日のためにピアノも一生懸命練習をしました。

園に到着すると、一人の保育士さんがワタシともう一人の受験者を小さな部屋へと通してくれました。

「今回は、お二人同時に面接をさせていただきます。今から別の部屋に移動するので、そこで面接を行います」と説明を受け、また違う部屋へと移動をすることになりました。

部屋に到着すると、半円を描くような形で6人の男女が椅子に座っていました。

6人の前には二つの椅子がポツンと置かれており、「どうぞ」と声をかけられて、私たちは言われるがまま椅子に腰掛けました。

「それでは、今から面接を始めます。その前に、お二人が保育士として向いているかどうかも見たいと思います。今からピアノを弾くので、その音に合わせてこちらが動物の名前を投げかけます。そしたら、言われた動物になりきって部屋を動き回ってください」と。

その瞬間ワタシも、もう一人の受験者も目が点になり、頭の中では(えっ、動物になりきるって何。こんなに大人が沢山いるのに動物になるの?私たちが動物になりきって、何をみようとしてるの)と頭の中はプチパニックですよ。

しかし、そんなことを考えている間に、有無も言わさず座っていた椅子をどかすように言われ、そして気がつけば二人揃って面接官の前に立っていました。

地獄の時間、開幕

一人の先生がピアノの前でスタンバイをし、曲を奏で始めました。

するといきなり、「はい、ゴリラ!」と言ったのです。

その瞬間、私たちは固まってフリーズしてしまいました、するとすかさず、「もう試験は始まってますよ。はい、ゴ・リ・ラ!」と言われ、大人6人の前でなんとも恥ずかしいゴリラ姿を披露する羽目になったのです。

そこからは怒涛のように、「キリン!」「ゾウ!」「次はネコ」「はい、うさぎになって」
「もう一回ゴリラ!」とポンポン一人の面接官からお題が飛んできました。

これは何が正解なのか、真剣に動物の真似をするのが正解なのか、再現度の高い方が正解なのか、この時も今も答えは謎のままです。

終始無表情の大人6人の前で動物を披露し、そして軽く汗をかいた状態で「はい、もう結構ですよ」と言われたのです。

ゴリラの時だけやたら時間が長く、そして何故こんなにも必死に動物をやらなければいけないのか疑問も残りましたが、その後は普通に面接が行われました。

結果は・・・

面接も全て終わると、ワタシは「今日はご苦労様でした。帰っていいよ」と言われ、もう一人の人は、別室に残るよう指示がありました。

結局ワタシは大人6人の前でゴリラを披露したのち、試験には落ちてしまい、そしてもう一人の人が試験に合格したのでしょう。

ゴリラの真似が下手くそだったのか、恥じらいがあったのか、何で落とされたのかはわかりませんが、落ちたと確信した時にはショックと安堵が入り混じるというなんとも変わった気持ちを体験しました。

あれ以降、ちょっとだけ面接が苦手になり身構えてしまうようになりました。

「またゴリラをやってなんて言われたら、どうしよう」ってね。

ナイーブな私に勇気をください

  1. TK1979 より:

    ゴリラになった日を読んで

     読み進めて行くうち、なんとなく、面接でゴリラの真似をしたのかなぁと思いました。
     案の定、そのようですね。しかも色々な動物ですか。笑うと言うより、緊張が走りました。笑(やっぱり笑)
     最初からそのような適性試験が明記されているならいざ知らず、これは辛いですね。下手をするとトラウマになりそうです。
     私ならどうするでしょうか。やるまた止める、とりあえず真似はしますか。笑
     職種的に、同じような面接と、また出会いそうに思えました。
     私は残念ながら不思議な面接は、経験がありません。唯一、初めて受けた面接で、頭の中が真っ白になり、何も話せなくなったぐらいです。初めての面接でありがちな話です。
     ありがとうございます。

    • いつも読んでくださり、ありがとうございます!そして、返信が遅くなってしまいすみませんでした。
      面接の時のゴリラをしていた自分を思い出すと、なんとも言えない気持ちになり、若干の黒歴史になりつつあります。笑
      それでもあの時は、真剣にゴリラになりきっていました。笑
      きっとこんなにも不思議な面接は、保育士か演技をする職業くらいでしょうか。笑

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