まず初めに・・・
こんにちは!オリエンタル納言です。
前回インスタグラムで、読みたいエッセイを募集したところ・・・
「クズ彼エピソード」がダントツで選ばれていました(笑)人の不幸は蜜の味、そして自分の不幸も蜜の味ということで、今回は元彼シリーズの中でも、一番驚きと切なさを感じた「山に籠る決意を固めた男」について書いていきたいと思います。
全てのエピソードはノンフィクションであり、そして当時の私もクズだったということも踏まえて、読んでもらえると嬉しいです。
アプリからの出会い
山(通称)と出会ったのは、あまり有名ではないアプリでした。様々なマッチングアプリをやっていて成果も出ず、困り果てた時にたまたまインストールしたところから運命は動き始めました。
広告とかでよく見るやつじゃなかったので不安もありましたが、当時は「もう、どうでもいいや」と、若干自暴自棄になっていたおかげで、抵抗もなく始められたような気がします。
私には、バッグパッカーとばかりマッチングするという謎の能力があり、数名の旅人からの連絡の中にいたのが、山でした。
お決まりのいいねをもらい、いいねを返してやり取りが始まりました。
「初めまして、よろしくね」というテンプレみたいな挨拶を交わした後、雑談を少しだけすると、音楽の趣味が妙に合って、すぐに意気投合したのです。
そこから毎日やり取りが始まり、山から「おはよう」と連絡が来ることを楽しみに待っている私がいました。
山は私よりも少し年上で、人生経験も豊富でした。若い頃は海外で自衛隊の経験があったり、その後も、外国をバッグ一つで渡り歩くバッグパッカーをしていたそうです。
聞いたこともない旅の話や、現地での思い出話、そして写真などを見せてもらいながら、「世の中には、こんな面白い世界があるんだ」と、どんどん興味が湧いてきました。
反対に私は、保育士しかやったこともないし、海外旅行もグアムにしか行ったことがありません。自分とはまるで別の世界にいるような山に、少しずつ惹かれていくようになりました。
その頃には電話もするようになっていたので、会ってはいないけれど気持ちだけが膨らんでいく、そんな感覚でした。
いつしか会ってみたい、どんな人かをもっと知りたいと、お互いが思い始めていくようになりました。
3時間の道のりを
やり取りをするようになり、約1ヶ月が経とうとしていた頃、「そろそろ会いたいよね」という話も、もちろん出ていました。
しかし、私と山は車で約3時間のところに住んでいて、簡単に「行きたい!」と言っても行ける距離ではなく、ちょっとした小旅行くらいの気持ちでないと行くことができません。
ただ、この時には私の盲目モードも全開になっていたので、「会いたい!どれだけ遠くても会いに行きたい」という気持ちの方が強かったのです。
そして「私さ、山の住んでいるところまで会いにいく」と言うと、山は驚きながらも「嬉しい。俺も会いたい」と言ってくれました。
事前にテレビ電話もしていたし、動いている彼も見ている。会うことに何一つ不安を感じることはなく、気持ちは「会いたい」一直線でした。
そしてとうとう日にちを決めて、彼の地元に約3時間かけて会うことが決まったのです。
初対面の時
山に会える日にちが決まれば、もうその日のために仕事を頑張ればいい。そこからとにかく仕事が楽しくて仕方がありませんでした。
もしかしたら、新しい恋が始まる?
もしかしたら、すごく意気投合しちゃって付き合っちゃう?
脳内お花畑な私は、もう明るい未来と希望しか思い描くこともせず、その日を今か今かと待ちわびていました。まるで遠足前の子どものように、新しい服を買って、新しいアクセサリーを買って、美容院なんか行って、少しでも好意を抱いてもらえるようにできる限りのことをしていました。
もうこの時点で盲目モード全開だったのですが、恋をするといつもと違って景色が見えたり、誰かに優しくできたり、何気ない日常に感謝してみたり(笑)。今思えばとても恥ずかしく、いい思い出だったなと思います。
さて、そんなこんなをしていると、とうとう山と会う日になっていました。
新しい服を身にまとい、サラサラになった髪の毛を念入りにセットして、アクセサリーも身につけて完璧な状態の中、約3時間の小旅行はスタートしました。
運転中色々なことを考えながら、ニヤついたり、ちょっとソワソワしたりしながら、あっという間に彼の住む場所に到着してしまいました。
待ち合わせの場所に着くと、すでに彼は待っていて、小走りで私に近づいてきました。
「遠いところまで本当にありがとう。疲れたでしょ」
「そんなことないよ!会えて嬉しい」
「俺もだよ!本当に会えるなんて思わなかった」
そんなやり取りをしながら、私たちはすぐ近くにある彼の家に行くことになりました。
初対面で家に行くことを、今思えば恐ろしく思うけれど、当時の私の辞書には危機管理能力という言葉は存在しておらず、何も気にせずにそのまま家に行ってしまいました。
「その時が楽しければいいや、きっと何も起こらないだろう」と思っていた自分を今なら叱ってやりたいくらいです・・・。
アプリで出会い、意気投合をして、山の家に行き、少しだけ緊張しながらリビングにちょこんと座って出されたお茶を飲みました。
すると台所には大きなスクリーンがあり、「映画でも観ようよ!」という提案により、映画を観ることになりました。
どんな映画だったのかは覚えていませんが、今まで画面越しでしか話していなかった人が、目の前にいることに胸がキュンとなっていたので、映画には全く集中できませんでした。
もう大人の皆さんなら分かると思いますが、映画を観終わった後、自然の流れに身を任せてその日に関係を持ち、私たちは正式に付き合うことになったのです。
交際開始
初めて会った日に関係を持ち、そして付き合うことになった私たちは、遠距離恋愛をすることになりました。
当時私は実家暮らしで、山は一人暮らしということもあり、山の家に行くことがもっぱらのデートになっていきました。
お泊まりだって自由にできるし、誰かに気を遣わなくてもいい。
距離は遠いけれど、それでも長く一緒にいられるのなら、遠距離だって頑張れると思っていました。
付き合った初めの頃は、山も行くまでの交通費を出してくれていたし、ご飯を奢ってくれたりもしました。
会いに行くことは大変だけれど、二人で思いやりを持ちながら付き合っていけば、今度こそ上手く行くかもしれないと、淡い期待を抱いていた部分もあったと思います。
しかし、それは付き合って3ヶ月までの話ですが・・・。
魔の3ヶ月は突然に
交際が始まって3ヶ月が経ったくらいから、少しずつ行くことに負担を感じるようになっていました。
会いたい気持ちがお互いに強かったこともあり、週1、長くて2週間に一度のペースで会いに行っていました。そうなると、交通費やガソリン代もかなりの費用がかかります。
初めの頃は出してくれていた交通費も、回を重ねるごとに減っていき、3ヶ月が過ぎた頃には、完全に無くなっていました。
デートといっても家で映画を観るか、音楽を聴くだけ。
外に出かけるとしたら、近くのスーパーに歩いて食材を買いに行くだけ。
その時の私は「インドアだし、お金もかからないし、ずっと一緒にいられるから」と言い聞かせ、現状を正当化できるようにしていました。
側から見たら愛されていないと、不安に思ってもおかしくない状況だったかもしれません。流石に私ばかりが毎回行くのは大変だと言ってみたこともあるけれど、山がこっちに来てくれたのは、合計でたった3回だけでした。
色々不満もありましたが、それでも会いたい気持ちが強かったし、喧嘩もすることなく平和にいられるのなら、我慢すればいいと思うようにもしていました。
しかしその気持ちがある日、大きな爆発を起こす原因になってしまうのです。
初めての喧嘩
それはとても些細なことから始まりました。
いつものように、山の地元へ3時間かけて会いにいきました。
「ねえ、たまには外でデートしない?知らない場所ばかりだし、色々知りたいんだ」
「えっ!?なんで?せっかく来たなら家でゆっくりしたらどう?」
「でもさ、私たちってデートあんまりしたことないから。たまには一緒にお出かけしたいなって・・・」
「でも俺、疲れてるし。家でゆっくりした方が色々できるよ?」
その瞬間私の心の中で(3時間かけて来た私は、疲れてないと思ってるの?デートしたいって思うことはそんなに悪いことなの?)と、小さな積み重ねが蓄積され、とうとう爆発をしてしまいました。
あっという間にお互いにヒートアップして、言い合いの喧嘩になってしまいました。両者一歩も引かない中、どちらもイライラしているし、喧嘩をしていることも虚しくなっていた頃、山は突然、こう言いました。
「俺さ、やっぱり恋愛向いてなかったんだよ。正直、デートは面倒だし、家でゴロゴロしたい、それにお金だってかかるしさ。俺、夢があるんだよね。だから、あんまりお金は使いたくないっていうか・・・」
「えっ!?夢ってなに?」
「俺さ、いつか山に籠って自給自足の生活したいんだよね。俗世から抜け出したいから。山の土地を買うためにお金貯めてるっていうか。だから、あんまり無駄遣いしたくない」
あまりの衝撃的な事実に、情報の処理は全く追いつかず、少しの間フリーズをしてしまいました。
頭の中では「山に籠りたい」「自給自足の生活」「お金」みたいな文字が、フワフワ浮かんでいるような状態でした。
沈黙がどのくらい続いたかは覚えていませんが、その後すぐに正気を取り戻したかのように、「ごめん。今すぐじゃないし、別れたいとかの話でもないよ。一つの夢っていうだけの話だから」そう言われて、妙に納得をしてしまったことで、喧嘩は中途半端な状態で終わってしまいました。
しかしこれがのちに引き金となり、この先の運命を大きく変えることになるのです。
<次回予告>
ナイーブな私に勇気をください