プロローグ
これは私が山と別れて、さらにカリスマとも別れてからのお話です。
当時の私は、恋愛も仕事も全く上手くいっていませんでした。何をするにも自暴自棄になり、全てにおいて投げやりで、後先を全く考えていませんでした。
そんな時に出会ったのが、この『吐息全集中男』だったのです。
今の時代アプリでの出会いが当たり前になりました。私のような出会う機会が少ない職種の人にとって、アプリはまさに救世主でした。
しかし、どんなことも正しい使い方をしなければ痛い目を見る、便利になったからこそ、身近に危険は潜んでいることを、私の経験から伝えられたらと思います。
この話が誰かのお役に立つことを、心から願っています。
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マッチングアプリからの出会い
山との別れから随分と経ち、カリスマと付き合ってみたり、謎の男たちと遊んでみたりと、誰がみても私生活は大荒れに荒れていました。
27歳で家を出て、友人とルームシェアをするようになってから、余計に歯止めが効かなくなっていたんだと思います。
私の荒れ果てた私生活を友人は、密かに心配しながらも見守り続けてくれました。
私は私で、「もう誰と付き合っても上手くいかない」そう言い聞かせることで、なんとか孤独を埋めようとしていたんだと思います。
本音を言えば、まともな恋愛がしたかった。
私という存在を愛して欲しかった。
当たり前のように互いを理解し合い、尊重できるカップルになりたかった。そんな願望をものの見事に全て外した状態が、この時の私です。
強がるように「遊ぶだけの関係が楽なんだ」と、言い聞かせていたのかもしれません。期待するだけ無駄なことを知っていたし、裏切られる辛さも身に染みて分かっていたから。
カリスマと別れてから、すぐにマッチングアプリをインストールして、色々な人とやり取りをしました。デートを重ねるけれども、付き合うことはありませんでした。
若い頃は簡単に付き合えたけれど、気がつけばもう27歳、随分と歳をとり、付き合うことすら難しく感じていました。流石に20歳の頃の写真なんか使えないから、今の姿に一番近いものを載せていましたが、それも余計に離れていく原因だったのかもしれません。
ルームシェアの家に帰り、友人と一緒にご飯を食べながら、マッチングアプリを漁る日々、まさに廃人と化した姿は、今思うと本当に痛々しかったと思います。
そんなある日、いつものようにアプリを見ていると、一人の男性がいいねをくれました。答えるように私もいいねを返し、メッセージがスタートとしました。
優しい雰囲気に好意を抱いて
「初めまして!よろしくね。雰囲気がとても素敵だったから、連絡したいなと思って」
「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします!」
そこからやり取りが始まり、趣味の話や仕事の話など、当たり障りのない会話をしていくようになりました。
「僕のことは吐息(仮)って気軽に呼んで!」
「私は納言って呼んでください」
「納言ちゃんは、保育士なんだね。見えないって言われるでしょ?」
「そうですね〜。あんまり保育士って言われたことはないかな」
「初めて写真を見た時、すごく個性的な子だなって思ったんだよね。でも、僕のタイプだよ(笑)」
「え〜!?ほんとですか?でも、嬉しいです。そう言ってもらえて」
会話はとてもスムーズで、フランクに話してくれる吐息のペースのまま進んでいきました。写真からでも伝わるお洒落パーマとファッションセンスは好印象で、少しずつお互いに距離を縮めていくことができました。
このまま仲良くなっていけば、デートもありかななんて思っていた矢先に、「ねえ納言ちゃん!僕ね、この土地に引っ越したばかりなんだ。友だちもいないからさ、今度案内してよ」
「いいよ!私もあんまり詳しくは分からないけど、できる範囲だったら」
「えっ!?ほんと?ならさ、今度の木曜日なんてどうかな?休日は基本仕事だから、平日の方がありがたくて・・・」
「うーん、あんまり遅くならないなら大丈夫だよ」
「やった!なら決まり。木曜日に会おう!」と約束を取り決めて、早速友人にも、今の状況と、木曜日に会うことを話しました。
「今連絡してる人と、今度の木曜日会ってくるね!」
「木曜日?納言ちゃん金曜日仕事じゃないの?」
「そうなんだけど、彼が休日基本仕事だから平日しか会えないんだって」
「そうなんだ。楽しんできてね!でも、何かあったら教えてね!」
「うん!ありがとう」
今までの私の恋愛や、今の現状をよく知っている友人からしたら、この時から嫌な予感がしていたのかもしれません。
しかしこの時の私は、何に対しても危機管理能力は無く、その一瞬が楽しければいいと安易に考えていたのです。
自分自身のことを全く考えることなく、目先のことだけに気を取られていたんだと思います。
約束の木曜日
とうとう約束の木曜日がやってきました。
吐息は用事があったらしく、用事を済ませてからくるということで、集合は夜になっていました。
終電時間の3時間前だったので、どこかでお茶をして直接話ができたらいいなくらいにしか考えていませんでした。
待ち合わせ場所に早く着いた私は、トイレで身だしなみを整えて、吐息が来るのをソワソワしながら待っていました。
すると、気だるそうな歩き方に笑顔の男がみるみる私に近づいてきたのです。
「納言ちゃん。遅くなってごめんね!写真で見るよりもずっと綺麗だね。服のセンスもすごくいいよ」
「全然待ってないよ。ありがとう、嬉しいな」
「この辺って、今あんまりお店やってないんだね。せっかく来てもらったし、ウチ近いからおいでよ」
集合が遅かったことと、コロナ禍ということもあり、どこのお店も閉める準備を始めていました。
せっかく来てすぐに帰るのも勿体無いし、けれど家に行くのも、なんか違う気がする。そんなことを頭の中で考えていると、「大丈夫だよ(笑)すごい難しそうな顔してるけど、変なことしないから安心して。せっかく来てもらったのに、そのまま帰ってもらうのも悪いしさ、もし良ければだけど、嫌なら無理強いするつもりは全くないし、納言ちゃんが好きな方にして」と言ってくれました。
物腰の柔らかさと、優しい言葉がけに「なんだ、吐息っていい人なのかも」なんて思ってしまい、私は「分かった。せっかく来たんだし、お邪魔しようかな」と家に行くことを決めてしまったのです。
家に行くまでの道中も、それそれは優しくエスコートしてくれました。そこまで遠い距離ではなかったけれど、「遠くまで、大変だったでしょ。ありがとうね。来てくれて」と声をかけてくれる。
何より、笑った顔や声のトーンから優しさが滲み出ている、そんな人でした。
きっとこの人なら、手を出さずに純粋に楽しく話ができるだろうと、安心し始めていたのです。
しかしこの後、私は痛感するのです。
人は、欲の前ではどん姿にでもなれることを。
それがたとえ悪いことを考えていようが、姿を変えて振る舞うことなど容易に出来ることも・・・。
この時の私は、知る由もなかったのです。
<次回予告>
ナイーブな私に勇気をください