お祓いを終えて清々しい気持ちで車に乗り込んだ時には、お祓いに行ったとは思えないほどのお土産を買っていました。
厄除け団子と呼ばれる和菓子に、普段ではそこまで買うことのないお守りの数。そして厄払いをしてもらった時に渡されたお札。
「これだけしっかり厄除けもしてもらったし、あとはパワーストーンさえ手に入れたらもう敵なしな感じしない?」
「確かにね。可愛くて素敵なやつがあったらお揃いにしたいね!」
「殿、納言ちゃん。ここなんてどうかな?」
「おおおお!なんだか“本物“って感じがしていいかも!よし、ここにしようか」
高速道路はぶち上げていこうぜッ
あれだけ灼熱の中で階段をひたすら登り、かなりの汗をかいたにも関わらず、3人が3人とも謎にテンションが上がり、アドレナリンがドバドバ出ている状態の車内は、まさにカオスそのものでした。
特に面白くもないけれど、くだらないことでゲラゲラ笑っていたし、特別な景色でもないのに大袈裟に感動してみたり。
私たち3人は、かなり心も体も清められていたのか、それともよほど厄払いが良かったのか、それぞれがどんな思いで、どんな気持ちの中でパワーストーンショップに向かっていたかは、今となっては思い出せないほど、あの時のテンションは異様だったと思います。笑
それでも噛み締めていました。
これからきっと幸運が舞い込んでくると。
そして私たちには強力なお守りがあることで、強力な結界でも張られているような感覚になっていたことも合わせておかしなテンションになっていた原因だったかもしれません。
ここは・・・どこ?
目的地周辺に着いた時には、地図アプリが「お疲れ様でした」と勝手に終了しようとしてきたのですが、目的地らしき建物は見当たらず、小高い丘の上の謎の高級住宅街へと来てしまったのです。
「ねえ・・・本当にここにあるの?」
「でも、地図ではここだって言ってるけど」
「もしかして、家の中でやってるとかじゃないよね」
「えっ・・・だとしたらかなり高いところなんじゃ」
「・・・」
「とりあえず、もう少し探してみる?」
「・・・うん」
吸い込まれるように
住宅街をぐるぐる回っていると、明らかに異様な雰囲気の家が正面に見えました。「ねえ、あそこなんじゃ・・・」そう言いかけた時には、もう車ごと吸い込まれるように一つ空いている駐車場に車を停めていました。
壁には天国の階段的な絵が描かれており、ところどころに焼き物のオブジェが並べられていました。
勝手に入ることを躊躇っていると、彼がインターホンを鳴らし「すみません。今からお店にお邪魔してもよろしいですか?」と聞くと、可愛らしい声の人が、「もちろんです。どうぞお入りください」と言ってくれました。
あまりにも異様な雰囲気にとんでもない場所にきてしまったという気持ちが、少しだけ拭われた瞬間でした。しかし、家の中に入った瞬間、一気に不安と恐怖に覆われることとなるのです。
絵に描いたようなお金持ち
小柄で可愛らしい人が玄関に立っていて、「どうぞ。暑かったでしょう」なんて言いながらスリッパを出してくれました。
女性の後ろについていくと、リビングの中には数えきれないほどのパワーストーンが並べられていました。ブレスレットだけではなく、あらゆるアクセサリーが陳列されており、他にも水晶玉やら、置き物やら、値段を見てしまったら失神してしまうレベルのオブジェまで値札付きで置かれていました。
さらにリビングには、キラッキラのダイヤモンドなのか石なのかわからないけれど、座るのも躊躇ってしまいそうなほどの豪華な装飾品だらけのソファまで置いてありました。
この時私たちは、思いました。
「完全に、入る場所を間違えた」と。
けれども入ってすぐに「やっぱり帰ります」なんてもちろん言えなかったから、ある程度さらっと見たところで、帰ろうと誰もが心の中で思ったはずです。
突然始まるダウジング
とりあえず一通り見ようと思ったものの、あまりにも桁違いの値段に空いた口が塞がらず、どうしたら早くこの場を去ることができるかだけを考えていました。
すると「私のところは、お客さんに何個かブレスレットを選んでもらって、それからダウジング(振り子の原理を利用してあらゆることを聞き出す方法)をするの。それで選んだ人と私の直感がピッタリあったものを購入してもらうってわけ」
「・・・そうなんですね。へぇそんなやり方があるんですね」
「私は霊能力者でもなければ、占い師でもないの。でも直感力が働く方ではあるから」
いきなりダウジングなんて言われても、正直そんなことは全くわからないので、どうやって反応すればいいか、どう答えたらいいのか、正解が分からずにただ話を合わせるという方法しかこの時は見つかりませんでした。
値段的にも到底買うことができないのはわかりきっているのに、どんどん買う方向で物事が進んでいく気がしてなりませんでした。
キラキラ輝く部屋の中で、ギラギラ輝く目をした女性の言葉ひとつ一つにどんどん不安感は募っていくばかりでした。
あなたのそれ、まずいわよ!
話がどんどん進んでいく中で、突然私の腕を見て女性は「ちょっと待って。あなたそれどこで買ったの?」と私の右腕を指差して言ったのです。
厄払いをする前に石川県で、気休めばかりのパワーストーンを買ったことがありました。そのブレスレットをつけていたことが、どうやら彼女の直感に触れてしまったのです。
「ごめんなさい。ちょっとそのブレスレット外してもらえる?私、頭痛いの。あっ。だめだわ。頭が、頭が痛い」そう言いながら、結構な塊の水晶を冷えピタがわりに乗せて、何度も何度も「あぁ、頭が・・・それはダメね。ちょっとまずいわよ」と繰り返していました。
せっかく買ったブレスレットを鞄の中に入れるようにと指示され、またまた私の方を指差して「あなた、かなり邪気がついてるわよ。これは、ちゃんとした石を身につけないと大変なことになるわよ」とまくし立てるように言い続けました。
そんなことを言われたら、なんだか怖くなってくるし、冷静に今考えれば買わされるフラグがビンビンに立った瞬間でもあったのでしょう。
これから始まる出来事は、人生の中で5本の指に入るほど奇妙な体験の始まりとなるのです。
次回
女性の指示通り、数個のブレスレットをピックアップすることにした納言。そこから始まる人生初のダウジング。
しかし、そこからさらなる恐怖体験が起ころうとしているとは・・・。
次回、『納言、パワーストーンを買わされる 後編』
お楽しみに〜。笑
ナイーブな私に勇気をください