床に溶けて、夏

オリエンタル納言日常日記

うだるような暑さ、迷惑なんてお構いなしのセミの声、そしてギラギラと照りつく太陽。

昔では考えられないほどの暑さが生活に支障をきたすほどの威力で毎日襲ってきています。クーラーをつければ、快適ではあるけれど乾燥で喉はやられ、逆に風邪を引いてしまうこともある。

だからと言って、天然サウナのような状態の外に出る勇気と体力は今のワタシにはほとんど残されていません。

梅雨が一瞬で真横を通り過ぎていったみたいに、早々にやってきた夏に今まさに苦しめられているのです。

ようこそ、灼熱地獄へ

夏で何が嫌かと聞かれれば、あらゆる文句が出てしまうのですが、何より車に乗ってからの数分間が地獄であり、苦行といっても過言ではありません。

ドアを開けた瞬間からモワッとした空気が全身にまとわりついて離れず、運転席に乗り込んだ時点で背中から汗がタラリと流れ始める。

どれだけクーラーをガンガンにかけても、初めのうちは熱風しか来ないもんだから、もはや暑い場所で暑い風を送られている新手の修行にしか思えない始末。

なんとか新鮮な空気を取り入れようと試みて、窓ガラスを開けても入ってくるのは生温かすぎる風により、まさに八方塞がりの状態になってしまいます。

特に仕事に行く前なんかは、せっかく部屋の中で涼んでいたのにも関わらず、車に乗り込んだことで一瞬にして汗をかき、なんとも不快な気持ちになりながら出勤することもしばしばなのです。

お風呂なんて大嫌い

汗をかけばお風呂に入ってスッキリしたいと思うもの。

だがしかし、お風呂だってただ気持ちいいだけで済むはずもなく、夏の暑さの中でのお風呂もまた苦行のような時間だと思っております。

脱衣所まではいいんです。

「さぁ、いっぱいかいた汗をしっかり流してきれいにしないと」と本気で思いながら準備をしているんです。

しかし、お風呂場に入った瞬間に若干の暑さを感じ、その瞬間に全てが嫌になってしまうこともあります。

「もぉ!お風呂なんて大っ嫌い!せっかく汗を流そうとしているのに、どうしてお風呂場まで暑いんだよ!どこにいっても暑いじゃないか!!!!」とぶつぶつ言いながらワタシは仕方なくお風呂に入ることがほとんどなのです。

ただ性格なのか、反対にましゅぴはお風呂の時間をすごく楽しみにしているようで、ウキウキしながら鼻歌まじりで湯船に浸かり、結構長い時間お風呂の中でリラックスしています。

そんな姿を脱衣所から扇風機にしがみついて見ているワタシは、彼のお風呂タイムを眺めて心底不思議な気持ちになっています。

セミよ・・・静まりたまえ

この猛暑に欠かしてはならない存在、それがセミです。

この暑さに蚊でさえもギブアップをしていて、なんなら「すみません。暑いんで、僕ら残暑が終わるくらいの10月手前から頑張らさせてもらいますぅ」なんて言っているかもしれないくらいの猛暑にも関わらず、セミたちは朝から夕方くらいまでそれはそれは迷惑すぎるほどの大合唱をかましてくれています。

こっち側としては、「頼むから、静かにしてくれよ・・・。その声を聞くだけで暑さが倍以上になるんだよ」頭を深々と下げて懇願しているのにも関わらず、全力で叫び倒しているのです。

もうこれは、猛暑の中で暑さなんて吹き飛ばすほどのライブ会場で、ボルテージマックスの観客たちの声量に匹敵するほどの大きさではないでしょうか。

たまになら、こちらも「同じ気持ちだぜ!!!」って一緒になって叫べるかもしれない。けれども、こう毎日毎日一定のテンションで盛り上がり続けることに、そろそろ嫌気がさしてしまいそうなのです。

ワタシは床とお友だち

こんなことを普段から、永遠と考えながら文句をひたすら垂れまくっているワタシですが、唯一心の拠り所と言いますか、心のオアシスとでも言いましょうか、夏になると友情を深め合える存在がいます。

それが床です。

クーラの効いた部屋の床は適度に冷たくて、ひんやりとしていて、心の底から癒しを与えてくれるんです。

夏の暑い日、何もしたくなくてたまらない日には身を委ねるように、床に寝転びながらぼーっと時間を過ごしています。

「あぁ、床よ。今日も癒しをありがとう。涼しさをありがとう。何があっても君から離れたりはしないよ。これからも末長く仲良くしてね」そう心の中でそっと囁きながらいつの間にか昼から夕方になっていることもしばしばあるのです。

性懲りもなくやってきて

これだけ夏が嫌だと文句を垂れていても、必ず毎年スキップをしながらやってくる夏。

海もプールもフェスもビアガーデンも行かないワタシにとっての夏は、何一ついいことがない季節と言っても過言ではありません。

もしもBBQをするのが好き、毎年海に行って泳ぐのが好き。花火大会に行ったり、夏の風物詩に癒しを求めて歩くことが好き。そんな風に思えていたら、夏に対する向き合い方も随分と変わっていたでしょう。

しかし残念ながら、ワタシはどれも好きではないために、ただ暑さに文句を言うだけで夏が過ぎ去ってしまいます。

けれどもたった唯一、夏のいいところは他の季節では聞こえない虫の声や、夜風の生ぬるさを感じるのは好きなんです。

あの独特の雰囲気と日中にはない寂しさを感じる夏の夜は、どことなくホッとできる時間かもしれません。

床に溶け込み、夏越して

まだまだ暑さは続き、ワタシの文句も当分の間続くことでしょう。

そんな時は唯一の親友である床と一体化しながら、辛い暑さをウダウダと乗り越えていこうと思います。

子どもの頃は夏が来ることを心待ちにしていました。

大量の宿題に追われた日々や、夏ならではの行事に胸を躍らせていた純粋な頃が懐かしいです。

暑さなんて気にもならなかったし、エネルギッシュで毎日が充実していたような気がします。この暑さに文句しか出なくなってしまったワタシは、子どもの頃の純粋さを捨てて、悲しいひ弱な大人になってしまったのでしょう。

けれども今さら夏を好きになれるわけでもなく、秋が来るまでの間は床だけを信じて、床に身を委ねがら夏を乗り切ろうと思います。

最後に

昔よりもはるかに気温が上がり、子どもも大人も外に出るだけで熱中症になりかねない温度が続いております。

普段よりもこまめに水分補給をしながら、外出された際はなるべく木陰で過ごし、適度に休憩をとりながらお休みを楽しんでください!

みなさまの夏の時間がより良いものになることを、ネコのように床に這いつくばりながら願っております。

ナイーブな私に勇気をください

  1. TK1979 より:

    床に溶けて、夏を読んで

     納言さんの仰るとおり、夏は不快な季節に感じられるようになりましたね。
     一昔、いや、もっと昔私が子供の頃は、どうだったのだろうと考えさせられました。
     クーラーなる電化製品が、我が家に設置されたのは中学生ぐらいだったと記憶しています。それ以前のことは、うっすらとしたきおくをたどってみました。
     縁側には、簾(すだれ)また夜になると蚊避けの網戸が設けられ、蚊取り線香の匂いが充満した寝室と室内に関してはこんな感じでした。
     寝具は日光天日干しされ、ふかふかになったふとんと糊の効いたパリパリのシーツが、肌ざわりよかったと覚えています。
     食生活は、桶に水を張ってスイカが冷やされ、干し椎茸で出汁を取ったそうめんつゆの香りが食欲を誘っていました。
     また母と食材を買いに近所の市場に行った時は、かならず冷やしあめ(あめを飲み物にして、少し生姜をきかせたもの)か、冷やしコーヒー(コーヒーを薄味にして甘味を加えた飲み物)を飲ましてくれました。
     私が思いだせた子供の頃の夏についての記憶です。不思議なことに、暑い、不快だと言うことは記憶されていませんでした。
     今の私は、納言さん同様、この不快な暑い季節が過ぎ去ってくれるのを、心待ちにしている今日この頃です。
     ありがとうございます。

    • いつも読んでくださり、ありがとうございます。
      今回いただいたコメントを読みながら、TKさんの過ごされた昔の夏は文章からも涼しさと風情があって、今のようなただ暑いだけの夏ではないように感じました。
      今では外に出た瞬間に汗が滝のように流れて、まともな行動が取れないくらい辛いものとなっています。
      子どもの頃に聞いていたセミの声も次第になくなって、基本的にクーラーのある部屋で何もせずにただ時間だけが過ぎていく日々を過ごしています。
      もしも過去に戻れるとしたら、夏を風情ある季節だと思える時代に行ってみたいものです。

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