作品と人生に色をつける

あなたにスポットライトをあてて

今回は、SNSで繋がったモトさんについて書いていこうと思います。

彼と出会ったのは、私がInstagramで映画や音楽についてのアカウントを作成したばかりの頃でした。

初めて彼の投稿を拝見した時のことは、よく覚えています。

モトさんは、抽象画や龍をモチーフにした絵、そしてジオラマなどを中心に投稿されている方でした。プロフィールには「趣味のアカウントです」と記載してあったのですが、とても趣味とは思えないほどの作品の数々に、言葉を失ったまま見ていたことを、今でも覚えています。

趣味の範囲を超えた作品たちの虜になり、モトさんの投稿を一人のファンとして見るようになっていきました。

初めて涙を流した作品

モトさんの投稿が上がるたびに、彼の世界観の中に入り込み、眺めることを楽しみにしていました。

しかしある作品を見た時、私の心を動かされ涙を流すことになったのです。

それは、2023年5月23日に投稿された『水面の想像』という作品でした。鮮やかな青色とエメラルドの輝きを放つ緑、そして2つの色を中和する黄色で描かれた作品でした。

その作品を見た時、亡くなった石川県の祖父との思い出が蘇ってきたのです。

元々漁師だった祖父は、煙草が大好きでした。親族の中で煙草を吸うのは私と祖父の2人だけだったので、祖父とはよく一緒に近くの海に行き煙草を吸うことがありました。

その間、二人に会話はありません。

ただ、流れていく潮風と波の音、そして遠くから聞こえるトンビの声がどこまでも広がり海へと降り注ぐ。その光景を見つめながら二人で時間をかけて煙草を吸っていたのです。

そしてボソッと「うまいか?」聞かれ、「うまいよ。じいいちゃん」とだけ会話を交わし、また無言で煙を見つめるのが、2人だけの秘密の時間でした。

けれどもコロナ禍で2年間石川県に帰省することが出来ず、ようやく会える日にちが決まった一昨年の8月に、祖父は私たちと再会することもなく突然この世を去ってしまったのです。

二人きりの思い出の海と、モトさんの作品がリンクしたように、私は一つの景色として彼の作品を見つめていました。どうしようも無い悲しさと寂しさが湧き上がり、気がつけば頬をすーっと伝いながら涙が流れていました。

実は祖父の葬式が終わった後、もう一度一人で思い出の海に行き、誰もいない静かな場所で煙草を吸いながらどこまでも広がる海を見ていたのです。

その時の景色もやっぱり、モトさんの作品と同じ色をした海でした。

初めてだったんです。

誰かの作品を見て涙を流したのは。

今まで我慢していたものが溢れ出し、感情として表に出てきた瞬間でもあったのかもしれません。

しかし私は、その作品にいいねを押すことも、コメントを書くことも出来ませんでした。自分の心と折り合いがつかないまま、素晴らしい作品に自分の思いを乗せて伝える勇気がなかったんです。

勇気の一歩を踏み出し

それからも、モトさんの作品を一ファンとして見ることを続けていました。そしてモトさんも、私のブログを定期的に読んだり、感想をくれたりしながら、交流を深めていきました。

次第に私の中で、いつかモトさんと直接話をしてみたい、どんな人か自分の目で確かめてみたいと思うようになっていったのです。

ブログを読んでくださるお礼も兼ねたかったという理由もありますが、彼の描く作品と想い、そしてあの日の感動を伝えたかったことが、1番の理由でした。

しかし、私とはまた別の表現の仕方をされている方に、「お話をしたいです」なんて言ったら、変なやつだと思われてしまうかもしれないと、優柔不断で臆病者の私は、いつまでも話をする機会をうかがい、勇気の一歩を踏み出すことが出来ずにいました。

しかし、このまま終わってしまうのは嫌だったので、とうとう勇気を出して連絡を取ることにしました。

「もしよければ、モトさんと一度お話をしてみたいのですが・・・」と連絡をしてみると、意外にも「僕でよければ、全然大丈夫ですよ」と快く引き受けてくださいました。

こうして私は、憧れのモトさんと話す機会を作ることに成功したのです。

初めて言葉を交わして

約束は、2023年の6月6日でした。

その前の週からソワソワしたり、モトさんの作品を見て妙に緊張しながら当日を迎えました。

第一声は互いに緊張していたのか、絶妙な距離感を保ちながら世間話をしました。

しかし、時間が経つにつれて私はモトさんの作品に対しての想いを熱く語ってしまったのです。もはや一人のファンが作者に物凄い勢いで話してしまったことは、今となっては、少しだけ後悔しています(笑)。それでも、優しく話を聞いてくださり、時には「そんな風に言ってもらえて、すごく嬉しいです。ありがとう」と声をかけてくれました。

しかし、モトさんと話しているうちに、彼のうちに秘めた想いや信念、心の中にある大切な言葉たちを私に教えてくれました。

実は私とモトさんには、いくつかの共通点がありました。

仕事をしていた頃、120%の力を出し続けてしまい、真面目が故に力を抜くことが出来ずに心を壊してしまったこと。

働いている中で、間違ったことをしている人たちに違和感を覚えていても、自分一人が責められてしまい、会社にいる意味が、自分のやっていることが分からなくなってしまったことなど、職種は違うけれど似たような境遇だったところに、強く共感することがありました。

モトさんは16年間のうちの10年間会社のために働いてきたけれど、6年間は惰性のような、どうしょうもない気持ちのまま働いていたと教えてくれました。

しかし、あるきっかけで仕事を辞めることが出来たそうです。

友人の言葉に背中を押されて

それは、モトさんが30代の頃に出会った、利他食堂を営んでいる友人夫婦に言われた言葉がきっかけだったそうです。

詳しい事情を聞いたわけではないけれど、前の職場での環境の悪さや、間違ったことをしている人たちを見続けることに違和感を覚えていたモトさんでしたが、話をしていくうちに、モトさんが悪者になってしまうという構図が出来上がってしまったそうです。

そんな時に利他食堂に足を運んで、心の中にあった想いを友人たちに吐き出したことが運命を変える出来事となりました。

「やってはいけないことをしている人たちを許して、仕事を続けることはできないと思う・・・」

「モトくんの気持ちはどこにあるの?」

「正義感とかではないけれど、やっぱり許すことが出来なかったんだ」

「そっか。その言葉が答えじゃないかな?」と。

きっとこれ以外にも、背中を押してくれた言葉があったのではないでしょうか。ただ、多くは語らなくても、気持ちを聞いた上でスパッと言って欲しかった言葉を言ってくれたことが、何よりモトさんの辞める後押しをしてくれたそうです。

私自身も保育士をしていた頃、同じ経験がありました。

間違っている人たちが正義となって、正しいことをしている人が悪になってしまう環境が。きっと、私以外にも同じような経験をされた方は、少なからずいると思います。

「もしも、友人さんの言葉がなければ続けていましたか?」聞くと、「うーん。どちらにしても辞めていたと思うけれど、二人の言葉が背中を押してくれたし、勇気をくれたんだ」と話していました。

長く勤めれば勤めるほど、辞めるという選択をすることは、とても勇気がいることだと思います。けれども、モトさん自身も自分から行動を起こし、そして二人の大切な友人がかけてくれた言葉が、何より背中を押してくれたのでしょう。

人生に色をつけて

モトさんと話した時間は本当にあっという間で、気を抜いていたら1日が終わってしまうくらいでした。

エッセイを書いていなかったら、SNSを始めていなかったら、モトさんと繋がることも素晴らしい作品を見て涙を流す体験をすることも出来ませんでした。

話をしている間、モトさんは私に「人はね、自分の見たいものを自分の色で見ようとするんです。良いことも悪いことも偶然だって思っているかもしれない。けれどそれは、その人が見たいと思ったものが写し出されているんです。嫌なことが心の中で浮かんでいる時、自然と悪いことが見てくる。良いところが浮かんでいる時は、自然といいことは舞い込んでいくる。そうやって人は、自分の本質の中にある見たいものを無意識に見ているんです。自分が持っている心の色でね」と言いました。

私はその言葉を聞いた時、ハッとして普段の生活を思い浮かべていました。

嫌なものを見ようとばかりしていると、嫌なことは向こうから近づいてくる。

良いものをみようとすると、心が軽くなったように小さなことでも幸せに感じることができる。それをモトさんは、人の中にあるという言葉で表現してくれたのです。

そして続けて「どんな些細なことでも、『面白そうだな。どうなっているんだろう』って思いながら見ていくと、人生は全く違う見え方をするんです。視野を広くすることで見える景色が変わるように」と。

それは今の私には、1番刺さった言葉だったかもしれません。

新しいことを始めて挑戦している今、下を向いて歩き続けていた世界は、暗く同じ色ばかりが並んでいたような気がします。

けれども新しいものに挑戦し始めたことをきっかけに、顔を上げて前を向いて歩くようになり、色とりどりの景色が広がるようになっていきました。

小さなことに目を向けて、些細なことに感謝をして。

凝り固まった考えのまま、誰かを否定して、自分を蔑ろにしていた頃には、見えなかった景色を気づき始めているのかもしれません。

最後に

モトさんとの対談は、真面目な話もちょっぴりふざけた話も、時にはオカルト話まで本当に幅広く話させていただきました。まだまだ私の知らない世界があることを知るきっかけになりました。

彼に出会い話したことで、私の世界もまた違った色をつけて見えてくるのでしょう。

そして最後に、モトさんが言った言葉を綴り、終わりたいと思います。

今まで辛い経験も沢山してきたけれど、それがなければ大切なことに気づくことは出来ませんでした。だからこそ、今まで起きたどんなことにも、ありがとうの気持ちを持ち続けていたいと思うんです。

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モトさんのInstagramです!もしよければ覗いてみてください☺️

抽象画や龍をテーマにした作品、またジオラマなども多岐にわたって作られています。大胆かつ繊細に作られた作品は、見た人それぞれで解釈も見え方も違う姿に変化するような、素敵なものばかりです。

少しでも多くの方に知ってもらえますように、そして新たな人との繋がりが増えることを心から願っています。

 

 

 

ナイーブな私に勇気をください

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