高校生の時、少し想いを寄せていた先輩と一度だけ花火大会に行きました。
あの時の花火の景色はあまり覚えていませんが、今でも覚えているのは、花火終わりに突然降ってきた土砂降りを避けるために先輩の背中を追いかけながら猛ダッシュしたこと。
近くにあったファミレスで雨宿りのためにご飯を食べたこと。
緊張のあまり食事があまり手につかず、時間だけが過ぎてしまったこと。
それが今でも酸っぱい思い出としてワタシの心の中に残っています。
Re:Re:Re:Re:
出会った頃から先輩のことを少しだけ気になっていたワタシは、何がきっかけかは忘れてしまいましたが、連絡先を交換することができました。
今はLINEが主流だと思いますが、ワタシが高校生の頃はLINEではなくメールでのやり取りが主流でした。
初めてメールをした日は、特に緊張したので「連絡先を交換してくださり、ありがとうございます。よろしくお願いします」となんとも業務的な連絡をしてしまいました。そして、帰ってきた返事は、「よろしくぅ⭐️」的な感じの文章だったような気がします。笑
緊張しまくりのワタシと対照的に、先輩はかなりフランクで1人の後輩としての挨拶程度にしか思っていなかったと思います。
それでも返事が返ってきたことが嬉しかったし、学校以外で話ができるようになったことも嬉しかったです。
そして、今ではもう見られなくなってしまいましたが、メールのやり取りを重ねるたびに件名のところに「Re:Re:Re:Re:」と続いていくことがまた嬉しくもありました。
突然のお誘い
毎日ではないですけれど度々日常的なやり取りをすることがありました。
そんなある日、先輩から一通のメールが届きました。
「今週の土曜日に話日大会があるんだけど、誰かと行く予定とかってある?」と。
ワタシはその内容に目を疑い、喜びのあまりケータイをベッドに落としてプチパニック状態になりながらも、下書きを考えては消してを繰り返していました。
そしてようやく打てた文章は、「ぜひ、行きたいです」でした。笑
結構な時間悩んでいたんですけど、送れた言葉はその一行だけでした。
こうして緊張しながらも喜びの舞を披露するほどの嬉しいお誘いを受けて、ワタシは土曜日に花火大会にいくことが決まりました。
2人のつもりが・・・
誘われた時、ワタシは勝手に脳内で2人で行くものだと思っていました。
しかし、当日現れたのは同級生の男の子1人と、もう1人の女性の先輩、そして好意を抱いていた先輩の3人が一緒に現れたのです。そして先輩は「せっかく行くなら4人の方が楽しいかなと思って」とニカっと笑いながら話しました。
そんなことを言われたら、「2人が良かったです・・・」とは言えず、「確かに大勢の方が楽しいですよね」としか言うことができなかったのです。
幸い同級生と女性の先輩は面識もあり、話をすることも度々あったので、花火大会の道中は楽しく会話をしたり、出店で好きなものを買ったりもしました。
勝手にデートだと思い込んでいたワタシは、いつも以上にオシャレを頑張ったり、会う前に病院にも行っていたのですが、暑さと人混みの多さでセットされた髪の毛はベタベタになり、服装にも気を遣っていられるほどの余裕はありませんでした。
頭上に上がる花火を
両手には焼きそばと唐揚げ、他の人の手にもあらゆる食べ物が持たれている状態で、人混みを避けていった結果、名前もご利益もよく分からない神社に辿り着きそこで花火を見ることにしました。
一発目のドーンッという大きな音が鳴り響いたと同時に頭上高く花火は上がり、その瞬間に4人同時に「わぁぁぁぁぁ!!」と歓声が上がりました。
目の前に広がる様々な色の花火が、私たち4人の目の前に広がっているような感覚になりながら話をすることも忘れて、花火に夢中になっていました。
その隣には気になる人がいて、一緒に花火を見ることができている。それが余計に嬉しく、花火を一層引き立てているような気がしたのです。
突如豪雨が
花火大会も終盤に差し掛かったところで、花火の音ではない音が突然鳴り響きました。
ゴロゴロゴロゴロと地響きにも似たような低い音・・・。それは今日の主役を差し置いて雷が頭上に鳴り響いたのです。
そこからはあっという間に雲が空全体を覆い、一滴の雨からザァァァァと豪雨とかしたのです。
「このままだとやばいから、早めにどこかに避難しよう」そう誰かが言った言葉を合図に、私たちはあてもなく走り続けました。
雨に打たれ、雷の音に時おりビクッとしながら、目的地も決まらない状態で先輩の背中だけを見つめて走り続けました。
食べていたものは雨でぐしゃぐしゃになっても、切ったばかりの髪の毛が濡れて原型をとどめていなくても、靴がびしょびしょに濡れても気にする余裕もありませんでした。
そして到着した場所が冒頭で話したファミレスだったのです。
ファミレスでの記憶は・・・
ファミレスに到着した時には満身創痍で食べる気持ちにもなれず、しかも目の前にいるのが好きな人ということもあり、余計に食欲は削がれていました。
けれども「大人になればこれもいい思い出だ・・・」と思うことにして、その時間を楽しむことにしました。
ただそれ以降、何を話して、どんな時間を過ごしたかはあまり覚えていません。
全てを食べ終わった後、先輩は「そろそろ帰るか」との合図でこの会の時間はお開きとなったのです。
淡き日の思い出
花火大会以降も、先輩とメールでのやり取りはしばらくの間続いていました。
けれどもある日を境に、ほぼ毎日来ていたメールがパタっと途絶えてしまったのです。そして、その事実が分かったのは花火大会から数週間後でした。
ある日先輩が帰っているのを見たワタシは、その隣にいる人を見てショックを受けたのです。
その隣にいたのは、あの花火大会で人数合わせの場にいた女性の先輩だったのです。
2人は楽しそうに話をしながら、そっと手を繋いで歩いて帰っていました。
そして女性の方を見つめる先輩の表情は、今まで見たことのない笑顔と視線を向けていました。
あの日人数合わせに呼ばれたのは、かのじいょたちだったのではなくワタシだったこと。そして2人の間の距離を急速に縮めたのは、花火と豪雨だったこと。
そして何も知らないワタシは好意を寄せていたけれど、先輩が好意を寄せていたのは紛れもなく彼女だったこと、全てを悟った瞬間でした。
あれからもう随分と年月は経ってしまいましたが、今でも花火大会の季節が来ると思い出してしまうんです。
ほろ苦く甘くもない酸っぱい記憶を。
知らず知らずのうちに失恋していたあの記憶を・・・。
ナイーブな私に勇気をください
花火大会行かないを読んで
納言さん同様、皆何がしらのほろ苦く甘くもない酸っぱい失恋経験はあると思います。
私も中高生の時の記憶を思い出すことが、できました。笑
何故か納言さんのように鮮明に思い出せて、懐かしく感じました。笑
本文もそうですが、イラスト(挿し絵)が、大変読みやすくしていると感じました。
ありがとうございます。
TKさん!いつも読んでくださり、ありがとうございます。
最近挿絵を取り入れるようにしたのですが、「読みやすい!」という言葉が聞けてとても嬉しく思います!
文章が得意な人も苦手な人も、負担なく読んでいただけるようにと思い試してみました♡
学生の頃の恋愛って、真っ直ぐすぎるからこそ甘くほろ苦い経験がたくさんあるような気がします。結果は失恋でしたが、当時を振り返り「あの時の失恋の経験は無駄ではなかったなぁ」と思えるようになりました。