好きなものはとことん愛せ

保育士時代の体験談・過去のトラウマ

私は昔から、容姿にコンプレックスを持っていました。物心ついた時から、同級生たちと自分の姿を重ねて、悲観し、絶望し、惨めに感じていました。

元々肌が弱くアトピー性皮膚炎だったので、体は常に痒く傷だらけでした。至る所に掻き傷があって、赤く炎症を起こしている部分は、誰が見ても痛々しいと思われてしまうくらい、酷かったのです。

今でこそ半袖を着ることができるようになったけれど、特に学生時代は、恥ずかしくて半袖もろくに着ることもなく、常に長袖か肌が見えないような格好をしていました。

「汚い肌を見せたら、嫌われちゃう」そうやって、嫌われないように自分自身を守っていました。

肌を隠すきっかけ

保育園の頃は、まだアトピーだということも理解できずに、友だちと同じように好きな服を着て、半袖も当たり前のように着ていました。痒くて掻きむしってしまう時は、両親に「掻いちゃダメ」と怒られるだけ。

自分の容姿に疑問を持つことも、嫌悪感も抱くこともなく過ごせていました。

しかし、小学生になると一気に状況は変わってしまいました。

ある日、私の肌を見た1人の男子が近づいてこう言ったのです。

「お前の肌ってなんでそんなに汚いの?黒いところもあるし、ぶつぶつがいっぱいあるな」

「これは、アトピーって言うんだよ」

「お前病気か?気持ち悪いな。よし、今日からお前の名前はアトピー星人だ」

この日から、私のあだ名は「アトピー星人」となり、同級生たちは次々に私を名前ではなく、不名誉なあだ名で呼ぶようになりました。

何かするたびに「近づくな!アトピーが移るだろ。バイ菌はあっちに行け」と言われていました。そして運悪く一年生の時の担任でさえ、私の容姿を気味悪がって極力近づこうとしてきませんでした。

それは子どもだった私にも分かるくらい、露骨に態度に出されていたのです。

影の努力

見た目からのいじりはすぐにいじめに変わり、あっという間に私は孤立していきました。両親がそのことを知っていたかどうかは分かりませんが、娘の肌をなんとかしたいと、色々な努力をしてくれました。

湧き水が良いと聞けば、取り寄せて毎日2リットルの水を一緒に飲んでくれました。

にがりが良いと聞けば、お風呂ににがりを入れて入っていました。

病院も転々としながら、必死で治す努力をしてくれていました。

正直2リットルの水を毎日飲むことは、とても苦しかった。それでも「大人になるまでには、肌をキレイにしてあげたい」と両親も必死だったのでしょう。

けれども一向に肌が治る気配はなく、いじめが無くなることもありませんでした。

もう一つ、私は夏になると汗で肌がボロボロになり、冬は乾燥でボロボロになってしまう。夏場は半袖を着るから余計に目立ってしまい、さらにいじめは加速していくばかりでした。

思春期なりの工夫

思春期になり、自分の肌が荒れていることも他人と違うことも、十分理解していました。夏場は汗で余計に荒れてしまうから、着替えを必ず持って行き、なるべく汗をかいた状態にならないように工夫をしていました。

袖から見える赤く荒れた肌をみるたびに、「どうして私の肌は、こんなに汚いんだろう」と思っても、どうすることもできませんでした。

何も気にすることなく、半袖を着られる人たちが羨ましくて仕方がなかった。

いつしか夏場でも極力袖があるものを選び、一目に触れないようにするようになったのです。

忘れられない一言

高校、短大、そして社会人となり、それなりに恋愛もしてきました。ただ、どうしてもアトピーだと知られたくなくて、どれだけ暑くても半袖を着ることはしませんでした。

見えてないものを否定することはできないから、付き合っている間、肌のことで何かを言われることはありませんでした。

しかし、事件は起きてしまったのです。

当時付き合っていた彼とお泊まりをすることになったある日、いつもなら必ず自分のパジャマを持っていくはずが、この日だけは忘れてしまったのです。

彼は「俺のがあるから使いなよ」と言ってくれたのですが、渡された半袖は、ちょうど掻いてボロボロになっているところも見えてしまう。着るべきか断るべきかで悩んでいると、「俺の嫌なの?」と機嫌を損ねはじめました。

慌てて「ごめん、借りるね」と着たものの、やっぱり肌が露出してしまいました。彼は私の腕をパッと見て「ねえ、肌汚くね?(笑)めっちゃ掻いてるやん。ここも黒ずんでるし。もしかして今まで長袖だったのって、肌が汚いから?」と言われてしまいました。

恥ずかしいやら悲しいやらで、感情はぐちゃぐちゃになってしまい、涙を堪えていると、「冗談じゃん。まぁでも、女なんだから肌はキレイにしといた方がいいよ」と言われてしまいました。

今までの努力はいったい何だったのか、一番言われたくないことを正面から言われてしまったことで、深く傷つき、その後すぐに彼とお別れをすることにしました。

今までも同じようにバイ菌扱いされたり、汚いと罵られたりしたことがあったように、私の見た目は異様なんだとこの時改めて自覚をしたのです。

自分を愛し受け入れる

現在29歳になった私は、過去に肌のトラブルを抱えていたとは思えないくらいに綺麗に治っています。

しかし夏場や冬は肌が荒れたりボロボロになりやすいけれど、それでも長袖で隠すことはしていません。

自分が好きな格好をしているし、肌が荒れていても気にすることもやめました。そんな風に思えたのは、社会人になって数年が経った頃です。子どもの頃は加減が分からなくて、掻きむしってしまうこともあったけれど、今では色々な方法を取りながら、自分の体と向き合っています。

何より一番大きかったことは、大人になって出会った友人たちが、「あなたの肌は汚くなんてない」と、言い続けてくれたからだと思っています。

学生の頃は、見た目によるいじめや差別を受けてきました。もちろん、忘れられない言葉を吐き捨てられたり、扱いを受けたりもしました。

けれども今は違う。

それは身近な人たちが受け入れてくれたこと、そして何より私という人間を肯定してくれたからなのです。

アトピー性皮膚炎になっている人は、私以外にも沢山いると思います。きっと、見た目のことで傷ついたことがある人もいるでしょう。

ただ、私は思うのです。

容姿を否定する人たちは、一体どれほど素晴らしいものを持っているのでしょうか。

自分と違った姿を否定する権利なんて誰にもないはずだと。

傷のない肌で満足しているだけで、心の中が腐っていることに彼らはきっと気づいていないのでしょう。

そうはいっても容姿を否定された時は、本当に苦しくて心に深く大きな傷をつけられてしまいます。自分の存在価値を否定したり、周りと比べてどんどん考え方も歪んでしまうかもしれない。

けれど、忘れないでほしいのです。

見た目ではなく、あなたを愛し、肯定してくれる存在がいることを。

見た目ではなく、もっと大切なことに気づいている人たちが広い世界には沢山いることも。

どうか忘れないでほしい。

自分自身に自信を持ってください。

そして堂々としてほしい。きっとあなたの魅力に気づいてくれる人は必ずいるはずだから。

同じ痛みを知っている1人として、これからも画面越しから勇気になる言葉を贈り続けていきたいと思います。

それが私にできる寄り添いだから…。

 

 

ナイーブな私に勇気をください

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