保護者とワタシ

保育士時代の体験談・過去のトラウマ

ワタシは保育士になって子どもたちから多くのことを学びました。

時には勇気をもらうこともあれば、どんよりと暗くよどんだ心を明るく照らしてもらうこともありました。

彼らから多くのことを学び、大人としてではなく人間としてたくさんの成長をさせてもらったと思っています。

正直な話、職場の人間関係には恵まれませんでした。

ニュースで言われているような虐待がなかったとしても、不適切保育と呼ばれるような行動をしている保育士も沢山みてきました。

時には、自分自身がその不適切保育に片足を突っ込んでしまいそうになったこともありました。

激務が続く、意味もなく上司に叱責をされる、そして評価もされずに賃金も安いまま休みを削って、時間を削って、仕事をしていれば心も体も少しずつ壊れてしまう。

もしもあのまま劣悪な環境で働き続けていれば、今のワタシは存在しなくなっていたでしょう。

手を差し伸べてくれた大人たち

どれだけ辛くても職場の人たちは見て見ぬふりをしていたし、「辛いんです」と助けを求めれば「私の方が辛いんだよ」と言われてしまうことが当たり前でした。

だから誰かに相談をしたり、気持ちを吐き出すことができずにどんどん心が壊れていきました。

そんな時に手を差し伸べてくれたのは、保護者の方たちだったのです。

よくSNSやニュースなどで「モンスターペアレント」という言葉を目にすることがあります。

けれどもありがたいことに、ワタシは保護者の方たちには本当に恵まれたと思っています。

そして時折、ワタシの様子を心配して声をかけてくれたのも保護者の方々でした。

優しさに救われて

必死に笑顔を作ろうとしても、きっと心の奥底の辛さは隠し通せていなかったのかもしれません。

ある時には、「先生大丈夫?ご飯食べれてる?」と聞いてくれる方がいました。

「何かあったら、いつでも言ってね。話なら聞くからね」と声をかけてくれる方がいました。

「先生も仕事すごく大変だよね。何か協力できることがあったらいつでも力になるよ」と寄り添ってくれる方がいました。

それが一人、二人ではなく、本当に多くの方からそう声をかけてもらっていたのです。

そんなことを言わせてしまっている時点で、保育士失格かもしれません。

けれどもあの時は本当に心の底から救われたような気がしました。

「子どもたちも先生のことが大好きだから、先生が元気でいてくれるのが一番だよ。だから、あんまり無理しないでね。頑張りすぎないでね」そう言われた時には涙が出そうになる程、救われたのです。

仕事をやめても

結局ワタシは心の病に負けてしまい、前の園を辞めざるを得なくなってしまいました。

けれども今でもかつての教え子だった保護者の方々とは関わりがあって、小学校のイベントに呼んでもらったり、習い事の発表会のお誘いが来たりします。

辞めてもなお、子どもたちの成長を見ることができるて本当に嬉しく思っています。

そして会えたびに、「先生、元気になってよかった」「久しぶりに会えてすごく嬉しいよ」と声をかけてくれるんです。

中にはワタシの夢を知って応援してくださる方たちもいて、「いつか先生の夢が叶ったら、絶対に本買うからね。応援してるよ」と自分のことのように嬉しそうに話してくれたこともありました。

仕事を辞めてからも、こうして先生として接してくれること、そして何一つ変わらずに話しかけてくれることが嬉しくてたまりません。

それと同時に、「やっぱり保育士をしていてよかった」そう思うことができる瞬間でもあります。

言葉をかけられて

世の中にはモンスターペアレントに悩み、苦しんでいる方も大勢いると思います。

ワタシは職場の人間には恵まれませんでしたが、保護者の方にはとても恵まれていたと思います。

だから、これまで関わってくださった方々、そして今でも繋がりを持っている方々には感謝の気持ちしかありません。

子どもたちを預けるということは、仕事のためとはいえ不安も多くあると思います。

それでも信じて預けてくださり、子どもたちの成長を一緒に見届けられることが本当に幸せでした。

子どもたちのことを一緒に話している時間が好きでした。

時には全然関係ないことを話している時間も、すごく楽しかったです。

だからどれだけ辛くても、なんとか続けられていたのかもしれません。

夢を叶えて

ワタシの夢はまだまだ走り出したばかりです。

この先の未来がどうなっていくかはわかりません。

けれども、未来ある子どもたちのために、そしてあの時寄り添ってくれた保護者の方たちに恩返しの気持ちも込めて、ワタシは文章を書いていこうと思っています。

そして「保育士になりたい」と言ってくれた子が大人になった時に、ワタシと同じ道を辿らないようにしたいんです。

心を病んでほしくないんです。

子どもたちの笑顔を守り、そして保護者の方たちと成長を見守る喜びを共に分かち合うのが保育士だと思っています。

だからこそ、「保育士って、すごく辛いんだね」ではなく、「先生、保育ってすごく楽しいね。子どもたちってかわいいね」と素直に思える環境にしたいと思います。

最後に

世の中には今まさに保育園や幼稚園、子ども園にお子さんを預けている方が大勢いらっしゃると思います。

保育士の悪いニュースを見ると、きっと不安になることもあるでしょう。

ただそれはごく一部の人間であって、今目の前にいる保育士さんたちはお子さんのことを考え、そして笑顔を守るために必死に向き合っている人ばかりです。

どうか目の前にいる先生たちを信じ、そして安心してお子さんを預けてほしいと思います。

 

そして、ワタシと関わってくださった保護者の皆様。

あれから保育士としてではなく、作家として生きる道を選びました。けれども、子どもたちに出会わせてくれたこと、皆さんと沢山お話をして、時には一緒に笑って、時には一緒に悩んだ時間が本当に幸せでした。

できることならもう一度、直接会って感謝の気持ちを伝えたいです。

ワタシを保育士として、一人の人間として対等に接してくださったこと、何よりワタシのことを信じてお子さんを預けてくださったこと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

そしていつの日か、また先生として子どもたちにも皆さんにも会える日が来ることを信じ、これからも夢を追いかけていこうと思います。

皆さんから頂いた優しさを、そして数々の言葉を胸に抱きながら・・・。

ナイーブな私に勇気をください

  1. TK1979 より:

    保護者と私を読んで

    捨てる神あれば、拾う神があり

     一度読み終えて浮かんだ言葉が、表記の言葉でした。
     見限って相手にもしてくれない人がいると思うと、一方では助けてくれようとする人もある。たとえ非難され排斥(はいせき)されようとも、くよくよ心配することはないと言う励ましの言葉です。
     人間関係で悩んでいたり、職場移動をさせられて悩んでいる人に伝えたい言葉です。
     私も再度、噛みしめて見ます。笑
     もうひとつ、モンスターペアレント。
     私は子供が小学生の時、集団下校と言う行事がありました。その時、私の子供たちに下校途中で先生が学校へ帰ったと聞き驚きました。最後まで引率するかどうかは、知りませんでしたが、学校に抗議しました。
     ようするに、私がかってに思い込んでいた集団下校のイメージだけで、内容も把握せず学校へ帰った先生を責めました。
     まさに、これですね。今さらながら反省しました。先生すいませんでした。
     そんなこんな思いを抱かしていただいたエッセイでした。ありがとうございます。

    • いつも読んでくださり、ありがとうございます。
      感想を読みながら改めて保護者の方に救われたこと、そして寄り添っていただけたことに感謝する機会となりました。
      あの時、声をかけてもらえなかったら。
      あの時、子どもたちを信じて預けてもらえなかった。
      いろいろな理由があるとは思いますが、ワタシを一人の保育士として人として信じてくださり、多くの子どもたちと出会わせてくれたことが何よりも幸運だったと思っています。

      中々現場の状況や働き方がわからないと、保護者の方も不安になることってありますよね。
      大切なお子さんを預けるということは、そしてそのお子さんと関わるということは、尊い命を預かるということを頭の中にしっかりを入れて向き合っていく必要があると改めて感じることができました。

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