音楽の音に合わせて、右足と左足を交互に出していく。
イヤフォンから聞こえてくる音は、見ている景色をまるで大きな舞台に変えてしまう瞬間があるんだ。
少しだけ漏れてくるヒールの音でリズムを刻むように、一歩ずつ確実に歩みを進めていく。
鼻を通り抜けていく風に体をくぐらせて、自然と動く指先で感情を表してみる。
周りから見たらただの通行人かもしれないけれど、頭の中だけでもスターのように堂々と歩いてみたい時がある。
階段を降りる時は、いつもよりもゆっくりと時間をかけて。
意思の強さを表すあがり眉。
キラキラ光るネオン街のようにまぶたにラメを散りばめて、少し控えめなまつ毛に心を表しながら、アイラインはしっかり自己主張をさせていく。
真っ赤に塗りたくったリップで全ての魅力を引き出し、化粧という名の仮面をつけるんだ。
世界の中に飛び込む前に小瓶に入った香りの服を身にまとい、少しだけ履き慣れていない靴に指先から滑らせていくのが心地よく感じるんだ。
全てが完璧に整った状態でワタシは玄関のドアを開き、一番初めに太陽の光を浴びて歩き始める。
黒くて小ぶりなイヤフォンが別の世界に連れ出して、今から始まるSHOWへと誘い出してくれる。
周りに何を思われているかなんて、気にしない。
流行のファッションなんて気にしない。
この小さな街では少しだけワタシの存在が浮いているかもしれない。
けれどもそんなことさえも気にしない。なぜなら今見ている世界と、実際に暮らしている世界ではまるで違って見えているのだから。
ジャズのように不規則な音が鳴り続ける中、ワタシが堂々と歩けているのは、音楽と共に仮面を取り付けているからなのかもしれない。
いつもはしがないアラサーだけれど、こんな日くらいは格好つけてみたいと思うんだ。
いつもなら素通りする場所だって、面倒で使いたくない階段だって、この日だけはあえて使う気分になれてしまう。
周りにはただの通行人に見えているだろうか。
少しだけ背筋を伸ばして音楽を聴いている人間に見えているだろうか。
それでもワタシは全く別の世界にいるかのように、全ての照明がワタシに降り注いでいるかのような気分で歩いているのだから。
一歩ずつ歩く音が骨の奥底から響いてくる気がする。
歩きながら映る鏡に少しだけ目線を送って、たまには褒めてみようと思う。
今日のあなたは、最高だよって。
そう思いながら数秒だけ、自分の姿を確認して歩き去っていく。
いつもと違う服装で気合を入れた日は、一人きりの世界に入り込んだってバチは当たらないだろう。
だってたまには、格好つけたい日があるのだから。
ナイーブな私に勇気をください
たまにはカッコよくを読んで
音楽と共に仮面を取り付けている
納言さんは、お化粧と言う仮面でしょうか、私はファションと言う仮面をつけて、カッコつけます。笑
それは、それで好きです。
ちょっと逸れますが
『自信と卑屈』
でいただいた返信にとても感銘いたしました。
カッコつけている自分と裸の自分、一体私は誰なんて考えていると、納言さんのブログは、私にとって
『心のリリース(解き放つ)』
でわないだろうかと気付きました。
もし、納言さんと出会えなかったら、とっくにSNSの世界から消えていたでしょう。今こうして感想も打つことはありません。つまらない時間を過ごしていたに違いありません。
私も納言さんのように、日々カッコつけて歩きます。笑
ありがとうございます。