忘れもしない、あの体験・・・ 前編

オリエンタル納言日常日記

これは私が21歳の時の起きた、衝撃の出来事です。

もうだいぶ過去の話だったので、すっかり記憶から消していたのですが、つい最近、友人と遊ぶために迎えに来てもらい、車の中でたわいもない会話をしていた時のこと。

「そういえばさ、21歳の時に事故されて、人の車に乗れなくなったんだよね・・・」

「えっ!事故?それって納言が運転してたの?」

「いや、運転してない。私は助手席に乗ってた」

「えっ、じゃあ乗ってて事故に巻き込まれたってこと?」

「そうなんだよね。なんでこんなこと今思い出したのかも謎なんだけどさ・・・」

久しぶりの連絡

21歳になった頃に、久しぶりに短大時代の友人から連絡が来ました。

「納言!!元気してる?今度遊ぼうよ〜」

「えっ!?久しぶりだね!!遊ぼうよ」

「私さ、実は行きたいところがあってさ、そこは車でしか行けないんだけど、一緒に行かない?結構遠くなっちゃうんだけど」

彼女から素敵な雰囲気のカフェの画像が送られて時には、もう気持ちはカフェに向かって爆走していました。

どんな服を着ようか、何を食べようか、車の中では久しぶりのトークもきっと盛り上がるに違いない。

そんなことをひたすら頭の中で妄想しながら、日にちを決めて、彼女が迎えにきてくれる最寄りの駅まで行くことに決まりました。

それはもう、オシャレなカフェのために毎日の仕事も頑張ったし、久しぶりに会えることもやっぱり嬉しいし、もう何を考えても楽しいことしか浮かばない。

私は、完全に浮かれていました・・・。

楽しみにしていたカフェのせいで、とんでもないことになるとは、予想もしていなかったのです・・・。

約束の日

さぁ、約束の日がやってきたので、私はお気に入りの服に身を包み、化粧もバッチリして、待ち合わせ場所にウキウキで向かいました。

私たちが向かうカフェは、住んでいるところから約2時間ほどかかる山の中らへんにありました。

日頃は私が運転することが多かったのですが、ほぼ初めてくらいで友人の車に乗ることになっていたので、ほんの少しだけドキドキする部分もありました。

しかし、そんなことよりも楽しい車内、美味しいであろうカフェ、そして懐かしの友、もう言うことない。

「いざ〜〜〜〜〜!!!!しゅっぱ〜つッ!!!」と心の中で軽快な掛け声を出していると、車は急発進急ハンドルで進み始めました。

(えっ・・・、大丈夫か。かなり急だったよ。車乗るの初めてじゃないよね?ちゃんと今まで人乗せてきたよね?私が初めての乗車じゃないよね?)そんなことが、頭の中で一瞬駆け巡りましたが、そんなことを考えても仕方がないということで、自分の機嫌は自分でしっかり取りながら、車内の中では、恋愛の話や仕事の話が始まっていきました。

止まらない心のざわつき

私の理想はこうでした。

「ねえ、仕事どう?大変?」

「うーん。大変だけど、なんとか頑張ってるよ。てかね、最近好きな人が出来たの!」

「えっ!!!!!!嘘!!その話詳しく♡」

そこからは、お馴染みの恋バナに花を咲かせて、キャッキャウフフを楽しむつもりだったのに。

現実は、こうでした。

まずブレーキを踏むのが遅すぎて、信号待ちをしている車の後ろにベタ付き状態になっている。

しかも車間距離が近すぎるせいで、止まる時には、一瞬体を縮こませながら自然と体に力が入ってしまう状態でした。

そしてここからが1番不安だったのですが、アクセルとブレーキの踏むタイミングがとにかく分からないのです!!

これに関しては、急に減速したと思えば、いきなりアクセルをフル加速する勢いで踏み込んでくるので、(いや待て、これは車が壊れているのか、もしくは彼女自身がパニックになっているのか、どっちなんだ!!でも、せっかく運転してくれてるし、下手なこと言って傷つけてもなぁ。どうしよう・・・)と考えているうちに、車はどんどん山の中へと入り込んでいきました。

山道の方が道幅も狭く、見通しも悪い。

そして、最初から不安すぎる彼女の運転での山道は、もはや事故待ったなし状態だったと思います。けれども、短大の時には仲良くしていたし、大切な友だちだし、何よりこうして今二人で会えていることに感謝しようという、謎の悟りモードが始まった私は、もう運転について気にすることをやめたのです。

ふと隣を見ると、微かにハンドルを持つ手が震えている彼女を見て、私は確信しました。

(これは・・・、ダメなやつだ・・・)と。

ついに予想が現実に

彼女の微かに震える手を見た瞬間、車は上りのカーブに差し掛かっていました。

何を思ったのか、彼女はアクセルを踏み始め、車体は完全にコンクリートで作られた壁のようなものに向かって走っていたのです。

咄嗟に「ねぇ!ブレーキ踏んで!!!!!!!!!」

キキッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

すると車は、コンクリートの壁にドンと前からぶつかり、制御不能のまま一回転して後ろがぶつかったのを最後に、対向車線を超えた真ん中で停車しました。

ぶつかった衝撃で口の中がなんとも言えない味をしていたし、唖然としたまま私は彼女の方を振り向くと、顔面蒼白でブルブルと震える姿が目に映りました。

(あぁ、私がしっかりしないと・・・)そう思ったのです。

しかし、幸運なことに後続車の方々が、私たちの車が止まった瞬間に「大丈夫か!!」と降りてくださり、車を路肩に寄せる手伝いをしてくれました。

車を動かしている間も放心状態になった友人は、誰かに電話をしているようでした。

幸いにも路肩に移動できたので、友人の代わりに「ありがとうございました」というと、「私保険会社に勤めてるんだけど、この車なら保険降りるから大丈夫だよ。でも、本当によかったね。もしも、対向車が来てたら、あなたたち、生きてなかったわよ。一緒にいてあげたいんだけど、用事があるから、ごめんね」と。

私は「助けていただいて、本当にありがとうございました」とお礼を伝えました。

口の中でずっと変な味がしているのが気になり、口元を触ってみると、血が垂れていることに気づいたのです。

どれほどの衝撃が体にかかったのか、そして今はなんともなくても、きっと明日には大変なことになることも覚悟の上でした。

取り返せない後悔

見るも無惨にベコベコになった車は、誰が見ても廃車決定だし、こんな山道に誰が助けに来てくれるのかも分からないし、当時は21歳ということもあり、色々とパニックを起こしたまま、どうすることもできずに、とりあえず両親に電話をすることにしました。

事故の経緯と今どうなっているのか、そして今後どうしたら良いのかを聞くと「とりあえず警察を呼んで、対応してもらいなさい。また分ったら連絡して」と言われました。

電話を切り、友人のところに行って「あのさ、とりあえず警察を呼ぼう」と提案しました。

すると、「ちょっと待って・・・。警察はちょっと待って。とりあえず、お母さんが迎えに来てくれるって言ったから、とりあえず警察の前に、来るのを待とう」

「えっ・・・。でもさ、こんな事故になったんだから、警察呼んだほうがいいんじゃない?」

「いや、大丈夫。その辺はこっちでなんとかするから」

はい、これでさらに不信感&不安感は、もうMAXです。

こんなことを思ってはいけないのだろうけれど、(どうして事故を起こした側が、少し食い気味で言ってくるのか。しかも、なぜ私が『ごめんね』と謝っているのか)その辺もかなりモヤモヤし始めていました。

今頃、山奥のオシャレなカフェでランチしてたのに。

色々な話に花を咲かせていたのに。

それと同時に、自分自身にも腹が立っていました。

なんであの時「スピード出しすぎてない?」と言えなかったのか。

「山道だから、焦らずにゆっくりいこう」と声をかけられなかったのか。

もしも、私が気の利いた言葉をかけられていたら、私は今こうして、血がタラタラと垂れた状態でモヤモヤなんてしてないし、二人の友情も危うくなってなかったでしょう。

この時私は、肝に銘じました。

「もう、人の車なんて乗らない」と。

ここから始まる地獄の数時間

しかし、問題はここからだったのです。

友人は母親に連絡したきり、警察に電話するそぶりもなく、何度聞いても「とりあえずこっちで何とかするから」の一点張りでした。

分ったことといえば、友人の母が迎えに来てくれること。

しかし、場所が場所だけに何時に来るかは未定であること。

この二つだけでした。

何度も言いますが、私たちはランチを食べるためにここまで来ており、私は沢山食べたくて、朝食もしっかり抜いていたので、もうすでに空腹値は80%越えようとしていました。

考えれば考えるほど、虚しくなってくる。

どれだけ気を遣い、話しかけても、「うん」とか「そうだね」のオンパレード。

確かに、事故のショックは相当なものだと思う。

だけども、ショックで辛いのはお互い様なのに・・・。

そんなことを考えれば考えれるほど、私が泣きそうになっていたので、(大丈夫。大丈夫。今を乗り越えよう)と自分自身にエールを送っていました。

この時には、少しずつ首や腰、そして足までもが鈍痛のような症状が出始め、(あぁ、もしかすると、これは完全にむち打ちだな。仕事休まなきゃ)と、明日の仕事のことで頭も一杯になっていました。

しかし1時間経っても、2時間経っても、車は私たちの横を通り過ぎていくだけ。

そして3時間が経過したところで、「あのさ、お母さんたちって来れそうかな」と聞くと、「今向かってるって、言ってたよ」と返されるのです。

このやりとりを、一体何度繰り返したことか。

そして4時間が経過した頃、次第に辺りは暗くなり始めていました。

永遠にも感じられるほどの時間に私は、正直うんざりしてしまったのです。

そして、少しずつ彼女に対しての不信感と信頼もすり減っていくように感じながら・・・。

次回予告

友人の母登場により、ようやく終わりが見えたかに思えたその時。
波乱は静かに忍び寄る。

私の運命は、そして友情の行方は・・・。
くれぐれも、車の運転は慎重に。

 

ナイーブな私に勇気をください

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