リクエスト企画「秋の思い出」

コラボ企画

今回のリクエストは「秋の思い出」です。

毎年やってくる秋も、最近では少しずつ短くなってきているような気がします。

ただ、ワタシは秋が大好きです。

そしてちょっぴり切ない気持ちになるのも秋でした。

そんな秋の思い出を今回は書いていこうと思います。

それではスタートです!

心が揺れた秋の空

これは数年前の話です。

まだ20代前半だった頃、仕事も恋愛もがむしゃらなワタシがいました。

とにかく生きていることが精一杯で、働くことも、誰かに恋をすることも一生懸命だった頃。

ワタシには大切にしていた彼がいました。

交際経験がまだ少なかったワタシは、自分に自信がなくて、「好きだよ」という言葉を聞くだけで十分でした。

きっと周りから見たら、幸せだとは言えない二人だったかもしれません。

本当に愛されていたかといえば、きっと愛されてはいませんでした。

付き合ってはいたけれど、自分本意の性格だった彼に、随分と尽くしてしまっていたのです。

それもどこかで「彼が求めていることをしないと、嫌われてしまう」そんな自信の無さが現れていたのでしょう。

だからワタシは彼に合わせて、彼に尽くして、全てを捧げていたんです。

LINE越しの「さようなら」

そして別れは突然やってきました。

仕事帰りにいつものようにLINEを確認すると、通知の表示が2になっていたので、(きっと彼からだろう)と嬉しくなって、急いでLINEの内容を確認しました。

開く前に表示されていた文字を見て、ワタシは一瞬立ち止まったのです。

別れよう、もうやっていけない。

その言葉は、鈍器で殴られたような衝撃が走り、全身に鳥肌が立つような感覚を残しました。

恐る恐る開いてみると、こう書いてありました。

「別れよう、もうやっていけない。
君はとても素敵な人だけど、俺じゃない気がする。もっといい人と出会って幸せにしてもらいな」と。

どうしてあなたがそれをしてくれないの・・・。

ワタシの何がいけなかったの。

先週まで、あんなに楽しく会っていたのに。

毎日LINEもしていたし、昨日は電話までしていたのに。

どうして、どうして、どうして・・・。

諦めきれなくて

ワタシは納得がいかず、彼に急いでLINEを送りました。

「急に言われても、納得いかないよ。ダメだったところは直すから。もう一度話がしたい」そう残して、彼からの返事を待ちました。

職場から駐車場までは、少しだけ歩かなくてはいけません。

舗装されていない細い道を、金木犀の香りが漂いながら、ワタシは肩を落として車まで向かいました。

時折吹く風が、まるでワタシを慰めているかのように、そっと優しく背中を押してくれました。

もう一度だけチャンスを

彼からの連絡が来たのは、夜になってからでした。

少しだけ薄暗い自室で、彼と電話をしました。

理由を聞いても、はっきりしたことは言わずに、なぜ別れたいのかも結局わかりませんでした。

何度も何度も「ワタシのいけないところがあったら、直すから」そう言い続けることしかできませんでした。

すると、熱意に負けた彼は「じゃあもう一度だけ、よりを戻そう」そう言ってくれたのです。

あの時は、本当に嬉しくて泣きそうになりながら「ありがとう」と言いました。

しかし今となっては、なぜあそこでよりを戻してしまったのか、自分でも分からないんです。

2度目の別れ

しかしその1ヶ月後、ワタシはもう一度振られました。

「やっぱり、別れた方がいい」それだけの言葉を残して。

理由なんてものは、分からなかった。

本当に聞きたかった言葉も聞けなかった。

ただ彼は、「別れたい」それしか言いませんでした。

とても悲しかった。

理由も分からず一方的に振られて、よりが戻せたと思ったらまた振られたのです。

せめて別れる理由を教えてくれたら、きっとこの先の未来は変わっていたかもしれません。

約束のイチョウ並木

別れる数日前に、約束していたことがありました。

それは、秋になってイチョウの木が綺麗に色づいたら、一緒に見にいこうという約束を。

けれども、その約束が果たされることはありませんでした。

その代わり、ワタシは一人で近所のイチョウ並木の道を歩くことにしました。

金木犀の香りが鼻の奥を抜けて、一面黄色の木々とコンクリートに落ちた茶色く変色したイチョウの葉っぱ。

それを見ながら、初めて泣きました。

理由も分からず、好きなまま別れを告げられたことがどうしても悔しくて、悲しくて・・・。

関係は終わらなかった・・・

しかし、この話には続きがあるのです。

それから数ヶ月が経った2月に、彼から連絡が来ました。

「久しぶり、元気にしてる?」そう書かれた文章には、彼だけが呼んでいたワタシのあだ名も書かれていたのです。

もうとっくの昔に連絡先を消していたのに、そのあだ名を見た瞬間、すぐに彼だとわかりました。

そしてその連絡をきっかけに、私たちはもう一度会ってしまうのです。

恋人ではなく、彼の都合のいい存在として使われるために・・・。

その関係は、約一年続きました。

彼と出会って、付き合って、別れて、そして都合のいい関係も含めたら約2年の歳月を無駄に過ごしてしまったのです。

もっと早く、目を覚ましていたら。

とっくの昔に愛されていないということに気がついていたら。

あの時以上に傷つくことはなかったでしょう。

秋になると思い出すんです。

とても苦く、最低な秋の思い出を。

 

ナイーブな私に勇気をください

  1. TK1979 より:

    秋の思い出を読んで

    『覆水盆に返らず』

     そんな言葉が脳裏を横切りました。
     誰しも一度は経験がありそうな話です。もしかしたら、そのような事は最初からしない人の方が多いのでしょうか。
     例え新たな気持ちで元のさやに戻ったとしても、人自体は変わらないのでまた別れてしまう。失うことを恐れて食らいつくほど泥沼に引きずりこまれボロボロになり、やはり別れてしまう。
     もう若い時の話ですが、ものすごく共感しました。(泣笑)
     そんな昔話を思いださせていただいたエッセイでした。
     ありがとうございます‍♂️

    追記
     この企画もの大変面白いです 
     順次感想よせたいですね

    • 読んでくださり、ありがとうございます。
      秋になるとちょっぴりセンチメンタルになって、過去の嬉しい思い出も、そして悲しい思い出も蘇ってくるのが、秋なんですよね。
      若い頃は、相手に合わせる恋ばかりして、傷つく道を自ら選んでいました。
      振られたことも自分のせいにして、相手に嫌われたことも全て自分のせいだと考えたこともあったんです。
      ただ今振り返ると自分を犠牲にする恋は、うまくいかないし、誰も幸せにならないことを学びました。
      自分の人生だから、自分の気持ちを大切にすることを忘れてはいけないと今だから思うんです。
      誰しも苦い経験があると思います。
      その経験を次に活かすために、そしてより良い人生を歩むために、傷つく必要もある程度は必要かもしれません。

      皆さんにいただいたリクエストで、色々な過去を思い出す作業ができています。
      こうして読んでもらい、感想をいただけて本当に幸せです!ありがとうございます。

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