新たなスタートをきれるように

オリエンタル納言日常日記

9月5日は、ワタシのパートナーであるましゅぴの誕生日です。

今年で祝うのは2回目となります。

初めてお祝いをした時は、夫婦になる直前でした。

写真館に行って写真を撮ったり、いつもだったら絶対に行かないような高級料理であるステーキ屋さんに奮発して連れて行ったりしました。

覚えているのは、出されたケーキが肉の油の味がして、最後まで食べきれなかったことが、今でも印象深く記憶の中に残り続けています。

しかし、あの時の嬉しそうな顔を隣で見ることができ、ワタシまで幸せな気持ちになったのを覚えています。

そして、2回目の誕生日を迎えた今、あの時とは少しだけ状況が変わっていました。

申し訳なさの中で

それはワタシが仕事をしていないという事実でした。

本当なら、ディナーの予約をしてあげたかったです。

特別な日には、特別な思い出が必要だと思っていたけれど、今のワタシにはそれすらしてあげることができません。

お金がない今、やれることはできる限り予算をかけずに、思い出に残るようなことをしてあげることでした。

欲しいものを買ってあげることも、特別な日にしてあげることもできずに、誕生日の1ヶ月前には、少しだけブルーな気持ちになっていたのです。

(誕生日をどうやって祝ってあげたらいいんだろう・・・。何をしたら、ましゅぴは喜んでくれるんだろう)そんな気持ちが浮かんでは消えてを繰り返していたんです。

記憶をたどり

そんな時ふと思い出したことがありました。

とても悲しい思い出を。

付き合って半年が過ぎようとしていた頃、彼が大切に育てていた実家の猫が怪我によって亡くなってしまいました。

あまりにも突然すぎた悲報は、彼の思考を停止させて、何もかもが手につかない様子だったのです。

放心状態だった彼を乗せて、すぐさま実家まで車を飛ばして向かいました。

家に入ると、ましゅぴのパパが申し訳なさそうな顔をしながら「ごめんなぁ」とだけ言ったのです。

彼は返事をすることなく、亡くなった猫がいるリビングへと向かったので、ワタシも軽く会釈をしながら後を追いかけました。

目に映る光景は、毛布に包まれた状態で安らかに眠っている姿を前に、彼のママが頭を撫でながら泣いている姿でした。

ふらふらと近寄りながら、ストンと膝をついて涙を流す彼。

その後ろ姿を見つめるワタシ。

そして部屋の中を涙を啜る音と嗚咽の声が時折聞こえてくる、そんな状況でした。

二人の後ろ姿を見ながら、ワタシはリビングから静かに消えて、パパに一言声をかけました。

「パパ、今日は帰ります。きっと、3人でいたほうがいいと思うから。また日にちを改めて、手を合わさせてください」と。

すると、悲しそうな顔で「そうか。悪かったな、ありがとう」と答えました。

その言葉を背中に背負って、ワタシは彼の実家を後にしたのです。

まだ付き合っている状態で、悲しみの中に入り込むべきではないと考えました。ただ、彼の大きな悲しみを包み込むほどの力も、あの時のワタシにはありませんでした。

どうしようもできない現実と、悲しみが耐えきれず、その場を後にする選択肢しか分からなかったのかもしれません。

閉じ込めた気持ち

それ以降、彼が猫ちゃんの思い出を口にすることも、そして今まで撮り溜めた写真を見返すこともしなくなりました。

写真のフォルダーからチラリと見えた時には、さっと消して涙を流していました。そして「もう、顔は見れないよ・・・」と呟くのです。

色々な時を共に過ごしてきた家族が、不慮の事故で亡くなってしまった。

それは彼にとって、大きな悲しみと後悔だけを残し続けてしまったのです。

あれから彼は一度も、写真を見ることも思い出を語ることもしませんでした。

まるで忘れようとしているかのように、いっそのこと記憶から消してしまおうとしているかのように。

それを見ていることが、何よりも辛かったのです。

もう一度、思い出して欲しいから

30歳を機に新しく人生がスタートする。そんな気持ちがワタシの中にはありました。

大きな節目を迎える前に、この悲しみも思い出として移り変わってほしい、そんな想いを抱いていたのです。

そしてワタシはあることを思いつきました。友人であるメイちゃんにイラストを書いてもらうことを。

早速相談をすると、丁寧に話を聞きながら一つひとつ思い出を描き綴る作業をしてくれました。

二人の中では一生に一度のことだから、特別な想いを抱いて欲しいと心の中で強く感じていました。

何度もやり取りを重ね合い、そして写真の中から伝わる思い出を一緒に拾い上げていきました。

彼の中で、悲しみが思い出に変わっていくように。

そして、これを機にもう一度、顔を見られるように、そう願いを込めて。

完成されたイラストには・・・

出来上がった線画には、確かに物語があって、想いがありました。

彼の表情には、当時の楽しかった思い出やぬくもりが宿っているような気がしたんです。とても温かくて優しいイラストには、きっと彼女の想いも一緒に添えられていたのでしょう。

そのイラストをもらった時、ふと当時の映像が頭の中を駆け巡っていくような気がしました。

肩を震わせて泣いている彼を抱きしめることができなかった自分を思い出して。

たった一言の声もかけることもできずに、あの場を後にした自分の姿を思い出して。

もしかすると、ワタシなりの償いだったのかもしれません。

彼の気持ちを少しでも楽にすることができなかったことへの。

色々な想いが交差する中、最高のイラストはワタシの手元へとやってきたのです。

そして渡す時

誕生日の当日、事前に印刷したイラストと、そして作ってもらったキーホルダーを小さな箱の中へと入れました。

どんな反応をするか楽しみでもあり、少し怖くもありました。

けれども、これが何かのきっかけになることが一番の望みでもありました。

本当の意味で前に進めるチャンスになるのかもしれない、そんな期待を込めて箱の蓋をしめたんです。

いつも通り、ご飯を食べて百均で買った袋を渡しました。

粗品程度のプレゼントを渡した後、本題の箱の中身へと視線は注がれていく。

その姿を固唾を飲んで見つめていました。

キーホルダーを手に取った瞬間、ましゅぴは一言「もんちゃんだ・・・。もんちゃんがいる。どうして、もんちゃんが」と声を振るわせながら、そして涙を見せながらキーホルダーをキュッと抱きしめたのです。

「ずっと写真を見ることを怖がっていたから。そろそろ顔を見てあげてよ。大切な家族だったんだもん。きっとそのほうがもんちゃんも喜ぶよ」と伝えました。

しばらくの間、イラストの描かれたキーホルダーを眺めては、何度も名前を呼んで涙を流していたんです。

「本当にありがとう」

「これはね、実はメイちゃんに依頼したんだ。ましゅぴがもう一度思い出せるように、写真が辛いならイラストで思い出に変えられるようにって。一生懸命ましゅぴのことをもんちゃんたちのことを想いながら、心を込めて描いてくれたんだよ」

「そうだったんだ。すごく嬉しいよ。ずっと見れなかったから・・・。でもこうしてイラストになったら、見ることができたんだ。本当に、本当にありがとう」

そう言ってまたキーホルダーを優しく抱きしめていました。

その姿は、まるでそこにもんちゃんがいるかのような空気に包まれていました。

優しく抱きしめているのは、きっと大切だった家族のことを想ってだったのでしょう。

亡くなって以降、ずっと封印してきた気持ちを出すことができ、そしてワタシの後悔も涙と共に消えていくような気がしました。

新たなスタートをきって

こうしてましゅぴの30歳は幕を開けました。

ワタシにはお金がないから、高価なプレゼントをあげることも、ディナーに連れて行ってあげることもできませんでした。

しかし、それ以上のプレゼントをあげられたのかなと感じています。

その背景には、メイちゃんの助けがあってこそだったのです。

年齢はあくまで数字に過ぎません。

20代だろうが30代だろうが彼には変わりがない。そしてこれから先も新しいことを始めて、彼らしく自由に好きなことをまっすぐ突き進んで欲しいと思うのです。

家族として、戦友として、尊敬できる一人の人間として。

彼のこれからの人生を応援し、支えていきたいと思うから。

きっとこの先の人生でも、悲しい出来事や心が打ちひしがれる出来事が起きるでしょう。時には直視できない現実に苦しむこともあるかもしれません。

ただ、どんなことにも時間というものがあって、時には心を癒す力を発揮してくれることもあると思うのです。

その時間の流れに共に身を委ねていくことができたら、きっとどんなことも上手く進んでいくはずだから。

最後に

30歳になった今、また人として旨みが増しましたね。人間はスルメと同じで、噛めば噛むほどその人自身の味が出ると思うんです。

今までできなかったこと、新たにやろうとしていること、そして今まさに頑張っていること、どんなことでもいいからあなたの自由な性格に身を委ねながら、真っ直ぐ楽しんで歩んでいってください。

「人生は予測ができないから面白いんだ。そして、その人生を誰と歩むかで見え方はまるで違うんだよ。僕は、歩くなら君みたいな自由奔放な人と歩きたいんだ。僕たちが今進んでいる人生そのものが賭けなんだ。お互いに夢があって目標がある。望んでいる生活はできないかもしれないけれど、それもまた楽しいんだ。それも君と歩んでいるからだろうね」そう言ってくれましたね。

こんな性格に癖のある人間と人生を歩むことを選んだあなたは、大馬鹿者です。

けれども、あなたじゃなければ誰も歩いてはくれなかったでしょう。

だからこそ、あなたと共に人生を歩いていきたいと思ったのかもしれません。

時には道草をしてもいいかな。

何もしない時があってもいいよね。

歩きたくなくなったら、立ち止まってダラダラしてみようとも思っています。

そんな時は、とことん付き合ってください。

どれだけ時間がかかっても、一緒に景色を見ることができるのなら、ワタシも頑張れる気がするから。

陽だまりのような温かさと優しさを持っているあなたを、心から尊敬しています。

どうか、今年一年があなたにとって笑顔で満ち溢れますように。

そしてその笑顔をワタシにも見せてください。

お誕生日おめでとう。

あなたの活躍を、心から願っています。

 

 

ナイーブな私に勇気をください

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